⼤学でも「ヘリコプター・ペアレント」驚きの実態、保護者対応に悩む教職員たち 関係がこじれるのは大学側の姿勢にも一因?
ただ、ここまで関係がこじれてしまう原因の1つに、大学側の姿勢もあるような気はします。学生募集を行う段階で、過剰な「お客様」扱いをしてはいないでしょうか。
進学先選びの時点から、保護者は重要なステークホルダーです。前述の通り、オープンキャンパスに親子で参加する方は珍しくありませんし、大学側もその前提で保護者向けの説明会などを企画します。
どの大学も就職率の高さをPRしますし、一部上場企業などに就職した卒業生のエピソードばかりをパンフに載せる。一方で「本人がサボったら卒業できない」という学習者としての当たり前の条件は、ほとんど言及されません。
ウェブサイトでは就職率100%とうたっているが、実際には入学者の2割が中退、もう2割が留年している……なんてケースも実は少なくありません。さまざまなデータを見ればこうした実態はわかるのですが、大学が高校生側に発信する広報物では、全員が4年で卒業したかのように語られている。事実、高校教員や保護者たちは、地元の大学の中退率などを知ると一様に驚きます。「ここに入学した方は、ほぼ全員が就職できていると思っていた」と。
大学ブランディングというかけ声の下、キャンパスを繁華街に移し、学食をお洒落にし、学生たちのファッションに焦点を当てたパンフレットを作ることが、大学業界では流行しています。学生確保に悩む大学の事情もわかるのですが、高校生の側から大学の広報活動を見ていると、「後にクレームにならないだろうか」としばしば心配になります。
大学の姿勢次第で保護者は学生を見守り育てるパートナーにも、クレームを言うだけの消費者にもなり得ます。度を過ぎた要求には毅然と対応しつつ、情報発信のあり方も時代に合わせて見直すことも必要かと思います。
(注記のない写真: metamorworks / PIXTA)
執筆:進路指導アドバイザー、追手門学院大学 客員教授 倉部史記
東洋経済education × ICT編集部
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