単なる業務削減に盲点、働き方改革「進む学校」と「進まない学校」の決定的差 残業が減らない小学校を変えた「対話型」の改革

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早帰りだけを目的とせず、教員自らが学ぶ風土づくりを

働き方改革が順調に進む学校の特徴について、さまざまな学校を見てきた庄子氏は次のように話す。

「まず、教職員間に良好な関係性が築けていて、助け合う文化があることが重要です。そのうえで、理想の学校像を共有することで学校経営方針が一人ひとりの教員の中に落とし込まれていて、いつまでに何をするかという短期目標が明確になっている学校は成果が出やすいと言えるでしょう。教員間の業務分担に関しては、皆がついていきたくなるようなタイプの人を責任あるポジションに配置し、何でも平等に割り振るのではなく、力量に不安がある人の負担は軽減する配慮をしている学校では改革が進みやすくなります」

このほかに、職員室が片付いていて、雑談ができるコミュニケーションスペースが設けられている学校は、教員間の交流が活発になりやすいという。また、教員同士が互いの授業を見学し合う雰囲気がある学校や、自由進度学習やICTの活用といったこれからの時代の教育について話題に上がることが多い学校も、教員が目的意識を持って働き方改革に取り組めることが多いため、成果が出やすいそうだ。

「働き方改革というと、業務削減や早く帰ることだけが注目されがちですが、捻出された時間を有効活用して教育の質を高めることが本来の目的です。早く帰ること以上に学ぶことを大切にする風土がある学校、そのために必要な外部リソースをうまく活用できる学校は、残業を減らしても教育の質を高めていけるでしょう。管理職が『やりたいことがあれば何でもやってかまわない』という姿勢で現場の教員に裁量を持たせていると、改革の成果はさらに出やすくなります」

なお、働き方改革ではGoogleカレンダーの導入やクラウドでの共同編集などの校務DX化が効果的な施策の一つとなるが、庄子氏によると、「校務DX化は自治体単位での判断が必要となるケースが多く、現状では情報漏洩などへの懸念から消極的な姿勢のところが多い」とのこと。しかし、「働き方改革においては、国や教育委員会主導でなければできない施策があるのは確かですが、教員個人や学校単位でできることも多くあり、それをいかにして実行していくかが重要です」と語る。

管理職が働き方改革に消極的なことに悩んでいる現場の教員や、現場の教員の理解が得られずに悩んでいる管理職に対して、「まずは関係性づくりから始めてほしい」と庄子氏はアドバイスする。

「管理職が消極的なのであれば、いきなり働き方改革の話を持ちかけるのではなく、まずはほかの話題で良好な関係を築いたうえで、時代の変化に応じて働き方改革を進めることの必要性を丁寧に説明する必要があります。現場の教員の理解が得られない管理職の方については、自身と考え方が近い教員と良好な関係を築いてその人に権限をゆだね、現場の教員たちが萎縮せず動きやすい風土をつくっていけるとよいでしょう」

働き方改革では、例えば紙からデジタルへの移行など、「これまでの習慣が崩れることで痛みを伴う」と庄子氏は言い、こう続ける。

「その痛みを超えていくには、教員が一丸となって取り組める雰囲気があることが非常に重要。成果を焦るあまりにいきなり正論を押し付けるのではなく、相手の立場を理解しながら対話を重ねることから始めてみてほしいと思います」

(文:安永美穂、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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