若者層に大流行の「MBTI」に誤解?「16Personalities」過信は人生の選択狭める 公開情報少なく、結果の信憑性の有無は不透明
「流行する診断には大抵、“スケープゴート”が用意されています。つまり、『これにはなりたくない』と皆が感じる結果が存在しており、優劣をつけることで優越感を刺激するのです。これは、対人関係において『あの人は〇〇だから』と欠点を指摘する理由づけにもできてしまいます」
こうした価値観が社会全体に広まると、「このタイプとは仲良くしない」「このタイプは採用しない」などの差別的な発想が生まれかねない。小塩氏は学生にも、「うちは〇〇タイプを求めている」などと表現する企業には注意するよう伝えているという。16Personalitiesで人の能力を判断するのは、出身地や血液型で人を判断するようなもので、就職差別につながる恐れもあるうえ、一人一人と向き合うことをしない企業だと考えられるからだ。
しかし、すでにネットには、タイプごとの特性を解説する動画や、「あるある」を紹介するSNS投稿、「〇〇なタイプランキング」といった記事があふれている。
「16Personalitiesが盛り上がるのは、『同意される話題』だからです。占いや天気がそうですが、あからさまに否定されないものは会話のキラーコンテンツになります。16Personalitiesも、お互いに共感しあうことで楽しくなり、めったに否定されないことで“正当さ”を感じてしまうのです」
そのうち、都合のよい情報ばかりに目が向く「確証バイアス」がかかったり、SNSのアルゴリズムによって流れてくる情報が偏ったりすることで、ますます16Personalitiesを信用していってしまう。
就職や結婚など、人生の重要な判断を委ねてしまうリスクも
若年層の間では、自分の16Personalitiesをプロフィールに記載して「自己紹介」がわりにしたり、相手の“人となり”を知る手がかりとしても16Personalitiesが活用されている。しかし、小塩氏はそのリスクを次のように警告する。
「16Personalitiesを過度に信用していると、就職・恋愛・結婚など人生の重要な選択においても16Personalitiesに頼りかねません。例えば、『〇〇タイプに向く職業』などにとらわれて、その他のキャリアの選択肢を切り捨ててしまう学生もいるでしょう。実は気が合う相手との出会いを、『〇〇タイプとは相性悪いから』と避ける人もいるかもしれません。16Personalitiesの過信がもたらすのは、機会の損失だといえます」
そもそも研究の視点では、「適性」や「相性」を算出すのは非常に難しいそうだ。仮に、とあるタイプが特定の職業に適性があると言うならば、実際にそのタイプの人物が職場で高いパフォーマンスを発揮したのかどうか、追跡調査をする必要があるはずだと小塩氏は指摘する。
「また、相性は何をもって『よい』と定義するかが問題になります。例えば夫婦は、離婚をしていなければ相性がよいと言っていいのでしょうか。そして、それはいったい誰が決められるのでしょうか。それに、もし本当に16Personalitiesで相性がわかるとしても、16タイプ×16タイプすべての組み合わせをそれぞれについて相当な人数を対象に調査しなければ判定はできないはずです」