
マーガレット・アトウッド『侍女の物語』斎藤英治 訳/早川書房
『侍女の物語』の舞台であるギレアデ共和国は、社会の隅々まで監視の〈目〉が張り巡らされた全体主義国家だ。共和国では、出生率の著しい低下が目下の悩みとなっており、対策として、支配階層である司令官の妻を除き、妊娠可能な女性は「侍女」として国家に管理され、司令官との定期的な性交を強制されている。
司令官の妻は、自分で子どもを産めない場合、夫と侍女との性交を許容し、さらには協力しなければならない。妊娠できない女性は〈不完全女性〉の烙印を押され、放射能に汚染された〈コロニー〉に送られる。子どもを産めるかどうかが、女性の価値を絶対的に決める社会なのだ。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら