親の「善意」が落とし穴?受験を左右する「子を追い詰めるNGな声かけ」とは "発破かけたから合格した"という証拠はない

親の善意が引き起こす、「干渉」の落とし穴

医学部予備校ACE Academy 運営・講師/ 医師、DELF代表取締役
中学受験にて最難関の灘、東大寺学園、洛南、洛星中学に合格。高校時代は英数国にて全国模試10位以内。文系から理転し、現役で大阪医科薬科大学医学部に合格。医学部在学中より医学部受験の指導を実施。 医師免許を取得し、初期臨床研修修了後、教育の道を選んで「エースアカデミー」の運営に専念する。これまで、470名以上の医学部合格者を輩出。共著『医学部受験バイブル』(幻冬舎)は3刷重版
(写真は本人提供)
医学部予備校「エースアカデミー」を運営する高梨裕介氏は、「しんどい」と深刻に悩んでいる受験生の相談のうち、全体の6〜7割が親との関係に悩んでいる傾向を発見したという。
「受験生を見ていると、親の言動によって精神的に追い詰められ、メンタルが傷ついてしまうケースが散見されます。親と面談をすることもありますが、親自身が過度なストレスを抱えていて、そのプレッシャーを子どもに与えてしまうことが多いようです」
具体的には「自分が子どものために何かしなければ」「親がちゃんとしないと子どもの受験は成功しない」というプレッシャーを感じ、模試の成績が悪いと発破をかけて子どもを奮起させようとするなど、「軽度な干渉」が始まる。善意による声かけでも、子どもにとっては重圧になるそうだ。
「模試は、受験生自身が今の学力を把握し、課題を明確にする手段です。しかし、親がその結果に一喜一憂してしまい、子どもに大きな負担を与えてしまうケースは非常に多いです。たとえば、模試の出来が悪かったときに、『次の模試で結果を出さないと志望校は受験させない』と言う親がいますが、これは受験生に絶望感を与えることになり、逆効果です。『〇〇しないと××する/させない』というのは、短期の簡単な目標には有効かもしれませんが、受験をはじめ長期的で難しい目標には通用しないでしょう」
これらのアプローチは、子どものモチベーションをそぐだけでなく、親子ともに精神疲弊に陥る原因となる。さらに「重度な干渉」になると、成績が悪いと食事を抜いたり、記入した出願書類を破り捨てたりとエスカレートすることも。ここまでくると教育虐待の域だが、実際にこうした家庭が一定数存在するのが現実だという。
「このような親の態度は子どもの自己肯定感を大きく損なうだけでなく、親子関係を決定的に悪化させる原因になります。子どもの成績に口出しせず見守るとなると、相当な忍耐力が必要でしょう。しかしそれでも、親は子どもの成績に干渉するのを避けるべきです」