教員採用試験の低倍率、抜本的な解決策の1つは「全国共同実施」の理由と効果 自治体間で奪い合うのではなく協力するべき

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まず、事実確認が難しいので推測を含むが、教員として不安な人材も採用せざるを得ない可能性がある。前述のとおり、「低倍率=質の低下」と断定することはできない。とはいえ、併願者もかなり含まれている中で、低倍率の自治体では、かつては不合格にしていたような人も合格にせざるを得ない、「全入時代だ」と述べる関係者もいる。

さらに、教員不足、欠員がさらに悪化する可能性が高い。というのも、ほとんどの自治体では、教員採用試験に不合格だった人に、非正規雇用の講師職(常勤講師や非常勤講師)になってもらって、学級担任や授業をしてもらっている。

倍率が低いということは、不合格者も少ないということだし、これまで講師をしてくれていた人が正規教員として登用されることが増えているということなので、講師バンクは枯渇する。実際、全国公立学校教頭会の調査や全日本教職員組合(全教)の調査でも、ここ数年の教員不足は深刻化していることがわかっている。

これら2点とも、子どもたちへの教育やケアに直結してくる問題だ。知識や指導力に大きな不安を抱える先生がいては子どもに悪影響だろうし、欠員が生じては、教科の専門外の先生に教わる事態なども起きている。

ただし、上記のうち1点目については、即戦力を期待する考え方と運用を変えていく必要があるように、私は思う。誰だって、初任の1年目からバリバリやれるわけではなく、何らかの不安材料は抱えている。

企業などで、新卒を4月最初から現場配属して、重要顧客に1人でプレゼンさせているところは稀だろう。だが、学校現場は、4月から即、学級担任や教科指導を1人でこなす(初任者の指導役は付くとはいえ)。

妹尾昌俊(せのお・まさとし)
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表
徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー。主な著書に『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』『先生を、死なせない。』(ともに教育開発研究所)、『教師崩壊』『教師と学校の失敗学』(ともにPHP)、『学校をおもしろくする思考法』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中
(写真は本人提供)

今後どうしていくのか

ここ2、3年、文科省は各教育委員会に対して、民間との競争を意識して、教員採用試験の日程を従来より早めるよう働きかけている。

標準日を決めているものの(2024年は6月16日)、拘束力はないし、よそよりも早めに実施したいと考える自治体もあるし、準備などの関係から早めるのが難しいという自治体もあって、日程はばらけている(近隣同士は日程を合わせていることはある)。

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