「人手不足」は本当か?データからわかる現実とは 労働市場に低待遇で舞い戻ってくる人々の存在

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここで、図で描かれているグラフは1カ月当たりのフローの数字であることを思い出してほしい。

失業プールから非労働力への流出は、新型コロナ禍以前に比べて1カ月当たり平均1.3万人増えている。すなわち、新型コロナ禍直後の2020年の1年間(12カ月)で15.6万人、新型コロナ禍後の2023年までの4年間で62.4万人の規模で非労働力化が加速したことになる。

現在の労働力人口が6900万人強であることを考えると、新型コロナ禍後の 4 年間で約0.9%の労働力が、失業として顕在化するのではなく、非労働力化として潜在化してしまったことになる。

たとえば、観察される失業率が2.6%であるとすると、非労働力で潜在化した失業を考慮した「正味の失業率」は3.5%となる。

一方、2023年以降に失業率が下げ止まった時期には、非労働力の再労働力化が同時に進行し、労働供給が拡大してきた現象にも注目したい。

たとえば、2023年1月から2024年10月までの期間、少子高齢化で15歳以上人口が21万人減少していくなかにあって、非労働力人口は151万人減少した一方、就業者数は124万人、失業者数は6万人それぞれ増えた。

労働力調査を詳しく見てみると、人口減少にもかかわらず、非労働力プールから就業者プールへの直接流入(失業プールを介さない)によって就業者数が拡大してきた。

待遇の悪い求人にも応じる「非労働力」プールの人々

ここまで見てきた「失業の非労働力化」と「非労働力の再労働力化」の同時進行は、どのように解釈すればよいのであろうか。

若年人口の縮小を鑑みると、待遇の良い新卒市場で非労働力プールからの就業者数が拡大したとは考えにくい。

そこで、雇用保険給付を受けている失業者のケースを考えてみよう。

その失業者は給付金を上回る高い待遇の求人がなければ、給付期間ぎりぎりまでハローワークに通う。その後は、給付を受けるためにハローワークに行く必要もなくなり(労働統計では、この時点で非労働力として扱われる)、それまで受けていた給付金に見合わない低い待遇の求人にも応ずることになる。

年金受給が十分でない65歳以上の高齢労働者や、雇用保険の保護を受けていないパートタイム求職者は、最初からハローワークを介することなく、低い待遇の求人にも応じている。新卒市場を除けば、非労働力プールからの就業は、待遇が決してよくない。

とくに、2023年以降、非労働力プールからの非正規雇用がいっそう拡大してきた。

次ページ待遇の悪い求人を出す企業
関連記事
トピックボードAD