孫正義氏が投資でこだわってきたのは「200%とか300%ぐらいの成長じゃないとダメ。一気にブワッと起きて、根底を覆して長期的に続くような」というセオリー。過去に買収提案した中には、アマゾンも含まれる。成功の数だけ失敗もある。孫氏のトラックレコードから見えるものとは。
1997年頃のことだ。若手経営者が率いるITベンチャーのタニマチとして知られたCSK(現SCSK)創業者の大川功氏(1926~2001年)は晩年、悔しそうに次のようなことを語ってくれた。
「(CSKが)1984年にパラマウントからセガを買収したのは大成功。でもね、右手でバタバタうちわをあおいでいるような状態。実は同時期にサン・マイクロシステムズを買収する話もあったんだ。もしこれも買っていれば、今頃は左うちわだったのに」
楽しそうに話していたので、心底悔しいわけではないのかもしれない。確かにコンピュータ開発言語の「Java」、高速計算を実現するCPU(中央演算処理装置)の「SPARC」を生み出したサン・マイクロシステムズが掲げる「The network is the computer」は、1990年代後半においてはマイクロソフトという眩しすぎる太陽と対峙する、月のような対極の存在だった。そのサンを買っていさえすれば……。
「逃した魚」を悔しがる
悔しさは相当なものだったようだ。その後も大川氏は、マサチューセッツ工科大学のメディアラボにも多額の寄付を行うなど、未来を切り拓く科学への思い入れは強かった。
「逃した魚」の大きさを誇り、駄々っ子のように嘆く――。エヌビディアを買収できなかった悔しさを語るソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長の言葉を聞いていて、古い話ではあるが大川氏のことを思い出した。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら