世界記録はどこまで伸びるのか ジョン・ブレンカス著/矢羽野 薫訳 ~人類が達成しうる極限点を探る
あらゆるスポーツは世界記録を目指す。本書の原題は「ザ・パーフェクション・ポイント」。人類が達成しうる極限点を探ろうという書である。
注目度の高いものとして8種目(陸上100メートル走、マラソン、水泳、ゴルフ、バスケットボール、パワーリフティング、それにホームランの飛距離、水中での呼吸停止競技)が考察の対象になっている。
100メートル走では、2008年のジャマイカのウサイン・ボルトの出現が衝撃的だった。北京五輪で9秒69を記録。研究者によれば30年までは出ないはずだったという。予期せぬボルトの新記録達成で考察し直した結果、パーフェクション・ポイントは8秒99とされている。
水泳では、08年2月、100メートル自由形に新記録が出た。47秒84。これで限界と思われていたが、翌09年7月、ブラジルのシェロフィリョが46秒91を記録。パーフェクション・ポイントはまだ先にあるようだ。
評者の少年時代、水泳の1500メートル自由形の古橋広之進が持つ世界記録18分19秒0は、フジヤマのトビウオという異名とともに誇らしかったものだ。スポーツの記憶は選手と選手の記録とともにある。