セルビア「中国が改修」の駅崩壊で高まる不信感 「一帯一路」の一環、不透明さに市民ら抗議デモ

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一方で、関係国とのトラブルも各地で発生している。とくに途上国では、融資を受けたものの多額の債務を返済できず、港湾などの土地などを取り上げられるといった「債務の罠」の問題が指摘される。経済回復を狙ってG7(主要7カ国)の中では唯一参加していたイタリアは、かえって貿易赤字が拡大して政財界から批判の声が上がり、中国からの投資も停滞したことから、2023年に離脱を正式表明した。

鉄道業界においては、EU諸国のほとんどが慎重姿勢の中、ハンガリーが車両メーカー中国中車(CRRC)の工場を誘致するなど、中国製品を積極的に導入する動きを見せている。ハンガリーのブダペストとセルビアのベオグラードを結ぶ高速鉄道も中国企業の手によって建設されており、車両もCRRC製車両の導入が予定されている。

CRRC バイソン
CRRCが開発した電気機関車バイソン。ハンガリーで量産されるか注目される(撮影:橋爪智之)

だが今回の事故により、セルビア国内ではこの高速鉄道に対する不安や疑念の声も上がり、中国に対する不信感が高まっている。

不透明性や懸念だけでなく、実際に不信感を抱かれるような事態も起きている。車両などの競争入札において、中国政府から多額の補助金を受けたとされる中国企業が同業他社と比較してかなりの低額で受注を獲得した例もあった。EUでは外国からの補助金を受けた企業による入札に規制があり、この件は違法とみなされてブルガリアの鉄道車両受注案件では入札中止という事態になった。

改修工事と崩落の関係は明らかになるか

経済的に決して裕福とは言えない国々にとって、中国によるインフラ整備などを含めた大型融資の話は非常に魅力的に映ることだろう。ただ、価格を下げるための低品質な製品の使用や手抜き工事によるトラブル、後のメンテナンスに支障をきたすといったリスクと隣り合わせでは、長期的にはその国にとってマイナスになることもありうる。

中欧班列
中国と欧州を結ぶ貨物列車は好調だが、欧州諸国のほとんどは中国によるインフラ投資などに対して慎重姿勢だ(撮影:橋爪智之)

今回の崩落事故と中国企業による改修工事との関連は本当になかったのか、残念ながらすべて明らかになる可能性はかなり低そうだが、火消しに必死のセルビア政府の動きとは対照的に、国民感情が晴れることは当面なさそうだ。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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