インドは国産化?「新幹線輸出」なぜ難航するのか ベトナムも「自国技術」で高速鉄道建設表明
日中で繰り広げられたインドネシア高速鉄道の受注争いで、一つの決め手となったのは技術移転の可否だ。
古くは日本とフランスで競り合った1990年代の韓国高速鉄道プロジェクトから、技術移転の可否は争点とされてきた。結局、移転を認めるフランスが勝ち、韓国はフランス譲りのTGV方式の高速鉄道を国産化した。現状で唯一、日本の新幹線輸出に成功したとされる台湾も、もし直前の地震が発生していなければ欧州連合が受注していただろう。
巨額の資金を必要とする高速鉄道プロジェクトは、一国の命運を左右するといっても過言ではない。建設費の返済や、運営費用をどう賄うのかなどの不安や批判は必ず議会や国民から噴出する。実際、高速鉄道単体ですぐに黒字化することは不可能だ。その中で、高速鉄道の国産化を約束することは国威高揚にも繋がり、議会や国民を納得させる材料になりうる。
鉄道輸出は長期的視野で
ベトナムの例を見ても、日本が協力したプレF/S(フィージビリティスタディ、実現可能性調査)の結果に基づいて2010年に新幹線方式による高速鉄道計画を閣議決定したものの、国会の承認を得られなかった。その後、要請を受けたJICA(国際協力機構)が高速鉄道建設計画策定の予備調査及び本調査を実施したという経緯がある。その報告書の冒頭には、「先の国会での審議に応え、今後の議論に耐えられるだけの充分な検討が必要である」とある。
しかし、その後もベトナム政府の決断は先送りされてきた。つまり、ベトナム側の理解を得ることができなかったわけである。
ある日本政府関係者は、2010年代初頭、政府による海外鉄道案件醸成への過熱ぶりは異常だったと語る。民間企業の体力やキャパシティーが顧みられることのないまま、官邸主導、結論ありきで先行してきた。そんな中で、はたして現地の実情やニーズがくみ取られていたかは言うまでもないことだ。
被供与国から「押しつけ」とも揶揄されているODA(政府開発援助)とセットにした鉄道システム、とくに新幹線輸出にかかわる制度設計の見直しは必須だ。ODAを通じて、日本企業が利潤を得ること自体に非はないだろうが、あまりにも短期的利益を追求するばかりに、今の状況がある。もっと長期的視野に立ち、日本と相手国、お互いのためになる援助こそ、本来のODAのあるべき姿ではないか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら