インドは国産化?「新幹線輸出」なぜ難航するのか ベトナムも「自国技術」で高速鉄道建設表明
いきなり時速360kmに対応した車両をインド国内工場で製造することは不可能で、当初の国産化発言は、あくまでも価格引き下げの交渉材料、いわば「揺さぶり」と見られていた。
しかし、インド政府は本気だった。10月15日、BEML社はムンバイ―アーメダバード間向けの設計最高時速280kmの高速車両8両2編成を受注したと発表。2026年までの納入を見込む。現地報道によれば、E5系タイプ車両の調達に向けた交渉が難航し、具体的な導入スケジュールも見通せない中で今回の発注に至ったとし、インド政府は価格引き下げに努力しているとのことだ。
BEML製の高速車両1両あたりの単価はおよそ2億7900万ルピー(約5億1070万円)で、E5系タイプの4億6000万ルピー(約8億4200万円、いずれも開発費等を除いた純粋な車両価格)より大幅に安い。もっとも、E5系の導入を諦めたわけではなく、国産の中高速タイプ車両とE5系タイプの併存を検討している模様だ。
とはいえ、日本の関係者からすれば、寝耳に水、信じられない事態である。
このような完全インドベースの国産車両が導入されれば、信号や保安装置などの地上設備は設計のやり直しになる可能性があるし、はたして日系メーカーに対応できるのかという話になる。速度の異なる車両が入り乱れることになれば、運行計画も白紙に戻る。本当に2026年末までに調達が可能なのか、旅客営業に耐えうる車両なのかも未知数な中、開業への道は前途多難だ。
高速鉄道「国産化」が持つ意味
すべてがインド側の責任なのか。いや、さかのぼればその原因は、新幹線輸出をあまりにも安易に考え、「日本の鉄道技術は世界一」と傲慢な態度で向かい合っていた日本政府にあるといえるのではないか。
インドネシアでは、ジャカルタ―バンドン高速鉄道が2024年10月18日に開業1周年を迎えた。事故やトラブルなく1年間を走り切り、9月にバンドン地方で比較的大きな地震が発生した際も自動検知システムで全列車が安全に停車し、インフラの損傷もなかった。年間利用者数は580万人に達し、平日でも乗車率は7割以上と利用も定着している。
高速鉄道プロジェクトを推進してきたジョコ・ウィドド前大統領は10年の任期を迎え、10月にプラブォウォ大統領率いる新政権にバトンタッチした。新政権はインフラ偏重型の投資から脱却するというのが大方の見方であるが、高速鉄道プロジェクトは引き継がれ、スラバヤまでの全線開業を目指すことが見込まれる。同時に国産車両の開発、製造を間に合わせる構えである。
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