脱・事務方「大学職員」に求められる変化、生き残りに不可欠な「組織運営のプロ」 志願者数増加に頼る、量のアプローチには限界
志願者数に頼るだけの学生募集では限界も
多くの大学は、学生募集の改善を重要課題と位置づけています。これまで多くの大学が、「志願者の数を増やせば入試の競争倍率も上がり、優秀な学生も獲得できる」という、量で質を担保するような発想で募集活動を行ってきました。

進路指導アドバイザー、追手門学院大学 客員教授、情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点からさまざまな団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会で、進路指導に関する講師を務める。 兼任として三重県立看護大学 高大接続事業 外部評価委員、NPO法人LEGIKA「WEEKDAY CAMPUS VISIT」認定パートナー。公務実績として文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」ペーパーレフェリー、三重県「県立大学の設置の是非を検討するための有識者会議」有識者委員など。著書に『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など
(写真:本人提供)
志願者数最大化のために学食などをきれいにし、多くの広告費をかけてオープンキャンパスの来場者を集め、入試科目数を減らすなどして出願のハードルを下げる。一回の入試で全学部を併願できる制度も、志願者数を増やすうえでは有効だったかもしれません。
ただ18歳人口の減少が続く以上、この発想には限界もあります。これまでと同水準の志願者数を今後も維持しようというのなら、オープンキャンパスや高校訪問の頻度を上げたり、広告費を倍増させたりといった施策も必要になるでしょう。
費用対効果、労力対効果はどうしても落ちてきます。華やかな広報や出願しやすい入試制度は、入学後のミスマッチや中退のリスクを上げかねません。大規模な投資によってキャンパスを都心に移転する大学も増えていますが、移転先のマーケットもいつまで安泰かはわかりません。
さまざまな大学から持続可能な学生募集のあり方について相談を受けるのですが、できる限りミスマッチを減らし、入学者をしっかり育てて地域からの信頼を得る、そんな学生獲得の方法も模索せねばなりません。今後も「量」を追うことは大切ですが、組織に余力があるうちに異なるアプローチも並行して開発していくことが大事です。あまりに中退率が高い場合はその原因を探り、改善するといった施策も必要でしょう。