苦境にあった氷河期世代が互いに罵り合う悲哀 団塊の世代のように束になって発言ができない
ならばもはや、何も言わずに「自己責任論」で通り過ぎようという向きもあるかもしれません。本記事は人事管理を論ずるものではありませんので、そのあたりは専門の書籍に譲りますが、世代全体として個々人のミクロな努力がマクロ経済政策によっていかに脆く簡単に押し流されてしまうのかを事程左様に肌で実感した世代なのだろうと思います。
為替を政策批判の材料にしてきたマスコミ
そして、就職氷河期世代に対する経済政策ですが、これもまた、大手マスコミのダブルスタンダードが如実にあらわれています。この原稿を書いている2024年5月初旬の時点で1ドル=160円に迫る水準になっていて、日本の通貨当局は4月末からの大型連休中に為替介入(為替相場に対して影響を与えるべく、通貨間の売買を実施すること)を行いました。
円安とそれに伴う輸入価格上昇に端を発したインフレ傾向に対し、メディアは基本的に批判的でした。物価上昇が生活を直撃している。為替が過度な円安のせいだ。これは日米の金利差から来ているから、日本も金利のある世界にしなければならない! 一刻も早く金融緩和を止めて、利上げをするべきだ!
たしかに、原材料を海外から輸入する産業にとっては円安は不利になります。ドル建て(債権・債務の関係をドル金額で表示すること)で同じ値段で調達してきても、円に換算すると金額が大きくなってしまいますからね。
同じ理屈で、海外旅行もしづらくなるわけです。日本円での出費がかさんでしまいますから。その上、ウクライナ戦争など地政学的な要因による原油価格の上昇などに伴い、諸外国でもインフレが起こって現地通貨での値段も上がってしまっていますから、円安とのダブルパンチでますます厳しい状況です。
他方、日本からモノやサービスを輸出する産業にとっては円安は恩恵です。ドル建てで同じ値段で売っても、円に直すと為替差益が発生するわけですから。
円で同じだけの利益を取ればそれでよいと考えるならば、その分ドル建てで値引きできるわけで、価格交渉力が相当あることになります。いずれにせよ、日本を支える製造業にとってこれは慈雨ともいえる好機でしょう。
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