スズキ、「単独路線」で勝ち残れるのか ワーゲンとの"協議離婚"がようやく成立

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本来の提携目的だった技術支援が得られなかったことについて、会見で問われた修会長は、「従業員の奮起で(簡易ハイブリッドである)マイルド・ハイブリッド(の開発)や、(車体を)100キログラムも軽くして燃費を向上させたとか、従業員、特に技術者の努力によってほとんど解決できた。文字どおり、災い転じて福となす」と胸を張った。

全面刷新した小型ワゴン「ソリオ」に、マイルド・ハイブリッドを搭載した

軽に展開してきた、モーターによるアシスト技術「S-エネチャージ」をマイルド・ハイブリッドとして小型車にも展開。6月には初の自社開発ディーゼルエンジンを投入した。燃費性能の向上が図れるストロング・ハイブリッドなどの開発にもメドを付けつつある。IHSグローバルの波多野通プリンシパル・アナリストも「完全ではないが、スズキは世の中の技術トレンドには乗っていける」と話す。

環境は変わり「自立していきたい」

提携をした6年前とは状況も変わってきている。当時はリーマンショック後で、売上高の減少にいつ歯止めがかかるか、わからない状況だった。2007年には次期社長候補だった小野浩孝専務が逝去。2008年にはGMとの資本提携が解消になっただけでなく、津田紘社長が病気で退任し、修会長が社長兼務を余儀なくされていた。米国では4輪事業の赤字を垂れ流し、原油価格も上昇が予測される中、環境保護のための規制に対応した技術開発も迫られていた。

対して、現在は業績高水準で、40%のシェアを握るインド市場も高い成長を持続している。課題だった米国市場からは2012年に撤退済み。原油価格は低迷し、各国の規制を除けば、顧客からの低燃費ニーズもそれほど高くない。

将来を見越せばEV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)、自動運転など技術課題は無数にあり、スズキが独力で対応していくには限界がある。だがそこは適切な協業で対応していけばいい。修会長は今後について「自立して生きていくことを前提に考えていきたい」と強調した。いきなり資本提携まで踏み込んでも成果が得られる保証はなく、こじれるとむしろやっかい――VW問題で学んだのは、そういうことなのだろう。

(撮影:尾形文繁)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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