鉄道とクレカ業者「タッチ決済」駆け引きの裏側 東急「運賃50%オフ」作戦、JRはどう出る?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここまでは、鉄道事業者側の取り組みを見てきたが、クレジットカード業者にも狙いがある。ビザ・ワールドワイド・ジャパンによれば、世界のVisaの対面取引に占めるタッチ決済の比率は年々高まっており、現在では8割に達しているという。たとえ少額でもあっても決済額が増えれば、クレジットカード業者の収入も増えることは想像にかたくない。

日本はどうか。世界の状況に比べると遅れてはいるものの、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのシータン・キトニー社長が「日本でもタッチ決済は急速に拡大している」と話すとおり、日本の実店舗でのVisa利用件数に占めるタッチ決済の比率は2021年が7%、2022年が13%、2023年が25%と倍々ゲームで伸びている。

Visa キトニー社長
ビザ・ワールドワイド・ジャパンのシータン・キトニー社長(記者撮影)

その牽引役として期待されるのが公共交通のタッチ決済である。公共交通でタッチ決済を利用する人は街中のコンビニや飲食店などでタッチ決済を行うだろうし、その逆もあるだろう。

交通系ICカードとのすみ分けは?

世界では独自の決済インフラを維持するためコスト負担が課題になっているという。これを日本に置き換えると、交通系ICカードということになる。

今年5月、熊本県でバスや鉄道を運行する熊本電気鉄道など5社が高額な機器更新費用を理由に交通系ICカードによる決済を12月中旬に停止し、代わってタッチ決済を導入すると発表した。5社は「タッチ決済での交通乗車時の処理速度は現行の交通系ICカードに引けを取らない水準で、ストレスなく利用できる」としている。

産交バス
交通系ICカードによる決済を停止しタッチ決済に切り替える熊本のバス(編集部撮影)

急速に成長するタッチ決済に交通系ICカードはどう立ち向かうか。熊本県のような事例はほかの地方都市では起きるかもしれないが、首都圏や関西圏では交通系ICカードが広く普及しており、交通系ICカードからタッチ決済に切り替わることはすぐには考えにくい。しばらくの間は交通系ICカードとタッチ決済の共存が続くはずだ。

最近は利用に応じてポイントが貯まるといったキャンペーンが頻繁に展開されている。もし両者の間でポイント付与を競うようになれば、利用者にとっても損な話ではない。

この記事の画像を見る(7枚)
「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。フォローはこちらから
大坂 直樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事