従来の「ペーパー型入試」は超公平!広がる大学「年内入試」の深刻な盲点 学校推薦型・総合型選抜の合格者が半数超に

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2023年度の大学入試全体における一般入試の割合は48.9%。それに対して学校推薦型選抜が30.5%、総合型選抜が20.6%で、学力で大学合格を目指す一般選抜よりも推薦型・総合型(旧推薦入試・AO入試)の割合のほうが多くなっている(文部科学省「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」)。こうした中、武蔵大学社会学部教授の千田有紀氏は「従来の日本の大学入試は非常に公平だった」と、受験生の親や家庭の状況が大きく影響する年内入試の拡大に懸念を示す。格差など現代社会学を専門とする千田氏に話を聞いた。

アメリカの格差を反映している「レガシー入試」

明らかに文部科学省は、従来のペーパー型の入試から総合型の入試に舵を切ろうとしている。それに伴って大学も、ペーパー型の一般入試から学校推薦型や総合型などの年内(旧AO)入試へと軸足を移していくことを余儀なくされるだろう。すでに早稲田大学では、2026年度には入試定員の6割を、総合型入試で選抜することを発表している。

千田有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て現職。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』(勁草書房)、『女性学/男性学』(岩波書店)、共著に『ジェンダー論をつかむ』(有斐閣)など多数
(写真:本人提供)

おそらくアメリカなどを念頭においてのことなのだろう。アメリカでは、ある意味ですべての入試がAO入試のようなものである。もちろん、SATという日本でいう共通テストのようなものがあり、そのテストで点数を取ることも必要である。しかしアメリカはいうまでもなく、格差の大きなことで知られる社会であり、入試もまた格差を反映している。

とくに、有名な大学では多くの学生が「レガシー入試」で入学している。これは親戚縁者がその大学の卒業生であり、とくに有名人であった場合などに適用される。名前を挙げるのははばかられるが、有名な政治家の子どもが一流大学に受かっている場合など、レガシー入試だろう。

アメリカのリベラルアーツカレッジでは、ほとんどが実施しており、その割合は1割から2割程度である。またよくドラマなどで、「入学したかったら(退学を免れたかったら)、図書館でも寄付をすればいい」という台詞が出てくるが、これも冗談ではない。レガシー入試は、そもそも親の大口の寄付が狙いの1つである。

こうしたレガシー入試は、1920年代に東海岸のアイビーリーグと呼ばれるエリート校を中心に始まっており、その目的自体が、とくにユダヤ人を排斥し、アングロサクソンのプロテスタントの学生を増やすことであった。つまり、ユダヤ人やカトリック教徒、アジア系の学生ではなく、白人系のプロテスタントというアメリカにおけるメインストリームを増やすために行われているのである※1

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