従来の「ペーパー型入試」は超公平!広がる大学「年内入試」の深刻な盲点 学校推薦型・総合型選抜の合格者が半数超に

アメリカの格差を反映している「レガシー入試」
明らかに文部科学省は、従来のペーパー型の入試から総合型の入試に舵を切ろうとしている。それに伴って大学も、ペーパー型の一般入試から学校推薦型や総合型などの年内(旧AO)入試へと軸足を移していくことを余儀なくされるだろう。すでに早稲田大学では、2026年度には入試定員の6割を、総合型入試で選抜することを発表している。

武蔵大学社会学部教授
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て現職。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』(勁草書房)、『女性学/男性学』(岩波書店)、共著に『ジェンダー論をつかむ』(有斐閣)など多数
(写真:本人提供)
おそらくアメリカなどを念頭においてのことなのだろう。アメリカでは、ある意味ですべての入試がAO入試のようなものである。もちろん、SATという日本でいう共通テストのようなものがあり、そのテストで点数を取ることも必要である。しかしアメリカはいうまでもなく、格差の大きなことで知られる社会であり、入試もまた格差を反映している。
とくに、有名な大学では多くの学生が「レガシー入試」で入学している。これは親戚縁者がその大学の卒業生であり、とくに有名人であった場合などに適用される。名前を挙げるのははばかられるが、有名な政治家の子どもが一流大学に受かっている場合など、レガシー入試だろう。
アメリカのリベラルアーツカレッジでは、ほとんどが実施しており、その割合は1割から2割程度である。またよくドラマなどで、「入学したかったら(退学を免れたかったら)、図書館でも寄付をすればいい」という台詞が出てくるが、これも冗談ではない。レガシー入試は、そもそも親の大口の寄付が狙いの1つである。
こうしたレガシー入試は、1920年代に東海岸のアイビーリーグと呼ばれるエリート校を中心に始まっており、その目的自体が、とくにユダヤ人を排斥し、アングロサクソンのプロテスタントの学生を増やすことであった。つまり、ユダヤ人やカトリック教徒、アジア系の学生ではなく、白人系のプロテスタントというアメリカにおけるメインストリームを増やすために行われているのである※1。