「エヌビディア」好決算でも市場が満足しない背景 焦点は「ブラックウェル」が計画通り出荷されるか

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フアンCEOは決算時の声明で、「ホッパーの需要は引き続き旺盛であり、ブラックウェルへの期待も信じられないほど」などと言及。コレット・クレス最高財務責任者(CFO)も「5~7月期に顧客へブラックウェルのサンプル出荷を始めており、11~1月期には数十億ドルの売り上げを計上する見込み」とした。

SMBC信託銀行プレスティアの山口真弘・投資調査部長は「会社側の計画通りに収益貢献してくれば、総利益率が11~1月期以降、上向きに転じることも考えられるだろう」と話す。こうした見方を映し、29日の日本株市場も売り物が一巡した後、いったんは日経平均がプラス圏に浮上する場面もあった。米国株の先物が時間外の夜間取引で値を戻すのに下支えされた格好だ。

米中対立やAI投資の収益性が不安要素

もっとも、エヌビディアの収益の先行きには不透明要因が残る。ひとつは米国と中国の対立だ。米国のトランプ前大統領は返り咲きをはたせば、中国に高率の関税を課すことを明言している。

バイデン政権も先端半導体の対中輸出規制強化など厳しい姿勢で臨む。エヌビディアの5~7月期の中国と香港の売り上げ全体に占める比率は約12%。トランプ氏とハリス副大統領のいずれが11月の大統領選で勝利を収めても、中国向けビジネスには逆風になる。

AI関連投資の収益性をめぐる不安も気がかり。7月下旬にハイテク株のウェイトが高いナスダック総合指数が下押したのは、「マグニフィセントセブン」各社の4~6月期決算がきっかけだった。エヌビディアの顧客であるグーグルの持ち株会社、アルファベットやマイクロソフトなどが設備投資拡大を打ち出したことで、コスト増への懸念が高まったのだ。

かねて株価のバリュエーション面での割高感も指摘されてきた。S&P500株価指数の算出対象企業の予想株価収益率は20倍台前半。一方、投資家に人気の経済・金融情報のサイト「シーキング・アルファ」が集計したコンセンサス予想によると、エヌビディアの今期の予想株価収益率(PER)は約47倍と市場全体を大幅に上回る。

米国株は9月のパフォーマンスが1年で最も低いとされるが、今年は米国の連邦準備制度理事会(FRB)による利下げなどで底堅く推移するシナリオも想定できそう。波乱が待ち構えているとすればむしろ、10月以降かもしれない。

日本株はたとえ、米国株が堅調でも円相場の動向には神経質にならざるをえない。エヌビディアの決算の悪影響が軽微にとどまったとしても、手放しで楽観するのは禁物だ。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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