「円高が来る」理論的根拠を深掘りして見えたこと 円高を示す「購買力平価」、財のみだと円安を示唆

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さしあたっての関心事はサービス購買力平価が示唆する円高が実現するのかどうかだ。結論から言えば、難しいはずである。

財貿易とサービス貿易の最大の違いは「国際取引における裁定が働きにくい」という点にある。例えばニューヨークよりも東京の床屋が安いからと言って、ニューヨークから東京の床屋に通う人間はいない。割高であろうとニューヨークの床屋は高いまま放置され、日本の床屋も割安なままだ。

こうした状況を想定すると、サービス業の賃金に関し、日米の格差(アメリカ>日本)が収斂に向かう可能性は高いとは言えない。

サービス業の日米賃金格差は続く

しかも、世界貿易に占めるサービス貿易の存在感は増しており、2023年には世界全体で8兆ドルに達している。これは世界の貿易取引全体の約25%に相当し、明らかに上昇傾向にある。

後述するように、国際的なサービス取引に関してはデジタル分野を中心に内外の賃金格差は拡大すら想定されることから、サービス購買力平価の示唆する方向感はむしろ一段と円高なのではないかと想像する。

もちろん、少子高齢化に伴う人手不足もあって日本の名目賃金も上昇が見込まれることから、日米サービス業の賃金格差は従前よりは縮まり、その分、サービス購買力平価で示唆される円高圧力も抑制されてくる可能性はある。だが、アメリカを逆転するには至らないだろう。

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