「円高が来る」理論的根拠を深掘りして見えたこと 円高を示す「購買力平価」、財のみだと円安を示唆

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製造業が高い国際競争力を誇り、貿易黒字を積み上げてきた日本では購買力平価が常に円高方向を示唆する時代が続いてきた。

しかし、財の購買力平価に関して言えば2012年後半を境に円高傾向が止まり、むしろ緩やかな円安傾向が認められる。仮に「製造業の輸出拠点としての弱さが円安の原因」という説に立った場合、その萌芽が見られ始めたのが2011~2012年頃だったという言い方にもなる。

実際、日本の対外直接投資が増え始めたのが2011年頃だった。度重なる円高や人口減、硬直的な雇用法制など多数の要因を背景として、その頃から製造業の海外生産移管が始まったと言われる。その背景事情に関しては紙幅の関係上、今回は割愛する。

いずれにせよ、そうして「輸出拠点としての弱さ」が定着した日本では、低生産性ゆえに財の製造や輸出が割高な国となった。だからこそ、これを均すための円安が理論的(購買力平価的)に正当化される状況が現れているとも読める。

進んだ円安が貿易赤字を修正しない理由

事実、その通りに実勢相場は円安になっているわけだが、それでも貿易赤字が解消されないのは、国内の輸出拠点が失われており、しかもそれを復元しようという動きが乏しいためだ。こうした事実に基づけば、政府・与党が対内直接投資の促進に熱を上げるのは必然の帰結だろう。

片や、サービス購買力平価は円高を示唆している。ここからは日本のサービス業の賃金が他国に比べて抑制され、国際競争力の観点から割安である状況が透ける。

日本のサービス業の生産性が低いと言われて久しいが(その是非はここで議論しない)、賃金さえ抑制されていれば、割安感は維持される。だから、これを均すための円高が理論的(購買力平価的)に正当化される状況にある。

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