金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱 ロナルド・ドーア著 ~経済を翻弄する金融化への警世の書
こうして格差を拡大し、不確実性、不安を増大させ、知的能力資源の配分を変え、信用と人間関係の歪みをもたらした、と鋭く指摘している。
経済の金融化によっていま世界経済が大混乱に陥っているのだが、日本もそれに巻き込まれたというよりも、積極的にそれを推進してきたのである。
こうして日本型企業システムのよい点は壊されているのだが、これに対してどう対処していくのか。
そこで著者は政府の銀行に対する規制や、銀行の自己資本規制、あるいは格付け会社に対する規制などを具体的に検討しているが、いずれも有効な対策にはなっていないという。
アメリカでは銀行と証券の分離というグラス・スティーガル法の復活という動きもあったが、これも挫折している。
経済の金融化が、このように世界経済を混乱させていることをあらためてわれわれに認識させるという点で、この本のもつ社会的意義は大きい。
それにしても86歳にもなってこのように手の込んだ分析をするとは、驚きである。
Ronald P. Dore
1925年英国生まれ。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院卒業。戦時中、日本語を学び、江戸期の教育について研究するため東京大学に留学。カナダ、英国、米国の大学で社会学部や政治学部の教授、ロンドン大学LSEフェローを歴任。
中公新書 840円 242ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら