「違い」を感じながら…クルド人の子の学習支援続けるボランティアが思うこと 白か黒かでなく学校現場の実情に合った方針を

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「昨年の3月から4月にかけて、このエリアに約200人のクルド人が避難してきたとも聞いています。同じ頃から、日本語がまったくわからない中学生以上の子どもが教室に来ることも急増しました」

日本語力の壁、不安定な在留資格…それでも学びたい子ども

日本に長くいて会話は流暢でも、日本語が学習言語にならない外国ルーツの子どもは多い。まして中学生になってからの来日では、本来はかなり集中的な学習が必要だ。

「日本語力に大きな問題があっても、定員割れを起こしている公立高校ならたいてい受け入れてくれる。でも結局勉強についていけず、単位制の学校に移ったり、中退したりする子も一定数います」

だが学校に溶け込む子どもたちもいる。ある生徒は、修学旅行のお土産として、小室氏に超定番のご当地スイーツをくれた。自分の家族にも同じものを買ったそうだ。同氏は「きっと友達と一緒に選んだのでしょう」とほほ笑むが、こんなことからも、彼らのとても「普通」な学校生活が見えてくる。また、困難な中でも勉強に打ち込む生徒もおり、今年も大学受験を望む高校生がいる。

クルド人の子どもが進学するには、受験期を過ぎるまで難民申請が却下されることなく、特定活動ビザなどが維持されている必要がある。こうした在留資格がなくなるといわゆる「仮放免」となり、たとえ合格しても留学ビザの申請もできなくなる。2024年6月には、「3度目以降の申請では『認定すべき相当の理由』を示さなければ送還する」とした改正出入国管理法が施行された。

日本生まれの子どもがいる家庭に在留特別許可を出すなど、近年は国の対応も変わってきている。だが小室氏の周囲には、生後半年から1歳で来日したため、この施策の対象外になった子どもも複数いる。

「在留資格のことを心配しながら勉強し、受け入れてくれる学校を探さなければならないことは、大きな負担だと思います。それでも学びたいと思っている子どもには、なるべくチャンスを示したいのです」

クルド人の学習支援を続ける小室氏だが、自身も川口市民として、近隣住民の葛藤も理解している。

「知人からもクルド人とのトラブルについて聞きますし、私もつい先日、クルド人が運転する車にひかれかけました。青信号の横断歩道を子どもが行き来して遊んでいて、車が曲がるに曲がれず困っているのを見たことも。そのときは子どもをトルコ語で怒鳴りつけましたよ」

ヘイトデモも行われたJR京浜東北線の蕨駅(左)。もともと外国人の多いエリアで、周辺のゴミ捨て場には多国語での注意喚起も(右)

他者との差は身近になるほど気がつくもので、その小さな積み重ねが日常の中で軋轢を生む。多様性やインクルーシブを考えるときには、まず互いの「違い」を認識したうえで、それを差別や同情に直結させない環境を作らなければ、多様性は絵に描いた餅になるだろう。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事