会費の不正利用が多発「PTAの金」問題の根本原因、学校への寄付にも要注意 P連でも使途不明金…健全な運営に必要なこと

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PTAの任意加入制が全国的に広がり、活動の省力化や適正化が進む今、PTAはたくさんのお金をかけて何かをする時代ではなくなってきているように思います。『お金のかからないPTA活動』こそが、現代社会のニーズに即しているのではなのではないでしょうか」

また、教員の負担軽減のため、文部科学省は、学校徴収金の会計管理は自治体が行うよう求めているが、依然として学校に任せている自治体が多い。そんな中、PTA会費を学校徴収金と一緒に引き落としてもらう“抱き合わせ徴収”を行っているPTAも多いが、「PTAと学校は、そもそも別団体です。本来ならば、PTA会費の管理に学校が関わるべきではありません」。

栁澤氏は続ける。

「メディアの報道などにより、PTAのお金の使われ方やPTA会費の管理の仕方に関心を持ち、『ちょっとおかしいのではないか』と疑問を感じている保護者は増えてきているように感じます。そういう方は、PTA総会の席で質問したり、議案に意見したりするなどの意思表示をするのが望ましいのですが、全体からみるとごく少数で、大多数の保護者は、『おかしいと思うこともあるけれども議論するのが面倒』『(そもそも)どうでもいい』という感覚でいるのが現状でしょう。

そんな中でも、思い切って声をあげ、こうした疑問や課題を草の根的に広げ、社会全体で考えていく風潮をつくっていくことが大切なのではないでしょうか。また、逆に提案する側のPTA役員も、質問や意見をいいやすい雰囲気をつくったり、それを受け止める風潮も必要ですね」

P連の使途不明金、最初は「領収書なし」の飲食から

続いて、学校のPTAが連なる「PTA連合会」(以下、P連)の使途不明金問題に移る。P連は、加入校PTAからの会費(分担金)に加え自治体からの補助金などもあり、収入が大きいぶん不正が起こるとその額も大きくなる傾向にある。

「P連のお金の不正は、最初は『領収書なしの飲食』などがきっかけになることが多いと思います」というのは、神奈川県横須賀市PTA協議会(以下、横須賀市P協)会長を6年間務め、2024年から同会顧問に就任した桜井聡氏だ。

「PTAは学校の応援団&市P協は単位PTAの応援団」をモットーの1つとして掲げ、健全な会計処理を行うことはもちろん、HP上にPTAの学校への寄付・寄贈などについての横須賀市P協としての見解を掲載するなど、PTA会計についての啓蒙活動を行っている。

P連の場合、組織の性質上、役員は連合会主催の総会や理事会、懇親会、上部団体に加入している場合は上部団体主催の会合に参加する機会が多い。

「それらの会合では、飲食を伴うケースも少なくありません。多くの方は、その席での飲食費は自腹で払ったり、所属するP連のルールに則り領収書をもらって精算したりしています。しかし、地域によっては、役員がP連専用のキャッシュカードを保有していることもあり、領収書を一切もらわず2次会、3次会と使い放題ということもあります。だんだん感覚がおかしくなってくるのか、P連のお金で自らの借金を補填するケースも見聞きしてきました」

「魔がさした」ではすまされないこれらの不正の要因は、「ひとえに監査体制が不十分であること」と、櫻井氏はいう。

「P連の会計は、通常は校長会や教育委員会から監査が入るはずですが、不正を行っているP連は、監査役の校長先生を意図的に外したり、会計監査を形式的にしているケースが見受けられます。年に数万単位の不正であっても、ずさんな会計監査が何年にもわたって続くと、使途不明金として雪だるま式に蓄積され、多大な額にふくれあがってしまうのです。ちなみに横須賀市P協では、会計監査は校長会が担い、年度末に出金伝票と通帳の突合を行っています」

P連の保険事業の落とし穴

P連によっては、児童生徒・PTA会員がPTA活動中に事故やケガなどをした際に備え、PTA保険の加入を斡旋する「保険事業」を行っているが、「この保険事業もお金のトラブルにつながりやすい」と櫻井氏はいう。

櫻井 聡(さくらい・さとし)
横須賀市PTA協議会顧問
2018〜2023年横須賀市PTA協議会会長、神奈川県PTA協議会理事を務め、2024年4月より現職。2014〜2021年横須賀市立荻野小学校PTA会長(7期)、2022〜2023年横須賀市立大楠中学校PTA会長。神奈川県警サイバーポリスサポーター、横須賀市社会教育委員、横須賀市防犯指導員などを務める。2023年公益財団法人日本PTA全国協議会会長特別表彰、2023年PTA活動振興功労者文部科学大臣個人表彰
(写真:本人提供)
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