子どもの頃、任天堂のファミコンで『スーパーマリオブラザーズ』を初めて遊んだとき、ここには小説や漫画や映画とは違う新しい世界があると思った。ビデオゲーム(以下、ゲーム)は一言でいえば体験の芸術であり、遊んだ人を独自の世界に没入させる力に長けた娯楽だ。
ゲームは現代日本文化の屋台骨の1つとなり、今では世界中にゲーム文化が広がっている。そして、体験の設計に優れたゲームは、マイノリティーを含め、世界のあらゆる人々にとっての多様な表現の手段となっている。
遊びながら多角的に評価
本書は、美術史研究者でありアーティストである著者が、多くのゲームを遊びながら綴(つづ)ったゲーム評である。フェミニストかつパンセクシュアル(性愛の対象を限定しない人)で、障害者でもある著者は、現代の国内外のゲームに含まれるさまざまな要素を自身の視点で読み解いていく。
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