プロ向けの取引ツールを個人投資家に提供する--齋藤正勝・カブドットコム証券社長
安価な手数料を武器に、個人の株式売買の7割以上のシェアを獲得したインターネット専業証券。しかし、2007年度以降は株式の売買代金が伸び悩み、収益環境は厳しい状況が続く。停滞する市場環境をどう打破するか。ネット証券大手4社のトップに聞いた。
--個人の売買代金のシェアで順位を上げている。
今は個人の株取引が低迷し、ネット証券にとっては収益を上げづらい環境なので、シェアは大事だ。当社はマネックス証券、松井証券を抜いて、個人の売買代金のシェアで大手では3位に浮上している。手数料の値下げをせずに、シェアを上げているのは当社だけだ。
その最大の要因は、東証のアローヘッドへの対応にある。アローヘッドの導入により、投資家の環境は大きく変わった。取引の高速化が進んだことで、板を見てサヤを抜く「1カイ2ヤリ 」といった超短期の取引手法は通用しづらくなっている。
その結果、地場証券のディーラーの数などが減ってきている。代わりに増えているのが、「スーパー機関投資家」ともいうべき、アルゴリズム取引(自動売買)を駆使する投資家だ。要するに、投資家自体が電子化されている。
現在、プロの機関投資家の世界では、取引所への取次処理速度(板乗り速度)が1秒(1000ミリ秒)以上かかっていては負けてしまう。当社では、同等のスピードで勝負できる取引サービスを、個人投資家向けに提供している。
プロの機関投資家と個人投資家の間には、情報格差こそ減っているが、スピード格差やツール格差はまだ存在する。そこを埋めることで、個人投資家でも勝てるプラットフォームを今後も提供していく。
--手数料対策はどう考えているか。
手数料の値下げ競争は今後も避けられないだろう。私は金融商品の「フリーミアム化」と言っているが、手数料の成れの果ては、ゼロにまで近づくと考えている。