「逆差別」の声もある中、大学理工系学部の「女子枠」入試が急増している必然 女性のSTEM分野進出は日本経済にとっても重要
「制度の目的や必要性を社会に明確に発信し、女子枠入学者のスティグマ化を防ぐ対策が必要です。公平性と多様性を重視していることから男女比率が均衡する学習環境を提供していくこと、これまでの男性中心の社会構造から脱して女性のSTEM分野へのアクセス不足を支援すること、学力を担保したうえでの多様な人材であることなどを強調し、誤解がないよう説明していくべきでしょう」
今後も増えることが予想される理工系学部の女子枠入試だが、まだまだ認知度は低い。ジェンダーギャップの解消のためには、中高生や保護者、中学校や高等学校の教員に対する広報や情報発信も不可欠だ。
「女性は男性よりも『将来はこれをやりたいからこの学部で学びたい』といった思考をする傾向にあるため、目的意識を得られるような機会をつくることが必要です。BCGの調査では、STEM分野を専攻する女子学生の約半数が『データサイエンティストは抽象的でインパクトに欠ける』と回答しています。現役の女子学生でさえ職業のイメージがつかめていないのですから、まして中高生は踏み込めません。今後は女性が具体的に将来を思い描けるようなロールモデルとの接点をつくっていくことなども、重要になってくるでしょう」
同財団では独自の奨学助成金など、STEM分野で活躍する女性の増加につながる支援を行っており、2035年までに大学進学時にSTEM分野を選択する日本の女性比率を、現在の19%からOECD諸国平均の28%まで上げることを目標としている。
「文科省の学校基本調査の数字では、2023年の理工系学部の女性比率は19%。1%上げるのに6年もかかっていますが、文科省は現在、大学学部の理工系転換を促す施策も進めており、予定どおり今後4年間で1万人ほど定員枠が増えれば女性のチャンスも拡大します。また、昨年11月に公表されたIMFのレポートでは、STEM分野に進出する女性の障壁を取り除くことで生産性の伸びが20%加速すると試算されています。つまり、STEM分野への女性進出は、日本経済にとって重要なカギだということ。このことを多くの人が認識できれば、ジェンダーギャップは解消されていくと考えています」
(文:國貞文隆、注記のない写真:takeuchi masato/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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