「逆差別」の声もある中、大学理工系学部の「女子枠」入試が急増している必然 女性のSTEM分野進出は日本経済にとっても重要

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「今回、回答した24大学すべてが来年以降も女子枠の継続を表明しており、中には枠を拡大する大学もあります。これは、大学が質の高い女子学生を集めて、教育環境の多様性を向上させようという強い期待を示唆していると言えます。現状はまだ黎明期にありますが、直近では京都大学なども名乗りを上げており、多様性の重要性を認識している大学に関しては引き続き女子枠の導入が増えていくと思われます」

実際、今年に入ってからも女子枠の導入を宣言する大学が増えている。佐賀大学、福島大学、室蘭工業大学、和歌山大学は2025年度から導入、大阪大学、京都大学、広島大学は2026年度から導入する予定だ。

理工系分野のジェンダーギャップを解消するには、やはり女子枠入試は有効だと大洲氏は語る。

「2019年のOECD調査では、アイスランドやスウェーデン、ポーランド、イスラエルなどで理系分野への女性進出が多くなっています。これは職業意識を醸成してきた歴史や文化的背景が関わっています。しかし、日本は横並び的な文化があるからこそ、女子枠入試は大きな効果があると考えています。実際、文科省による通知によって導入校が40大学、定員約700名分まで拡大したことはその証左でしょう」

また、多くの大学では、学力を見たうえで、面接や論文などを組み合わせて女子枠入試を行っており、「入学後の成績も良好で、優秀な女性が入ってくる傾向があると話す大学が多い」と大洲氏は言う。ただ、学力試験がない場合は、入学後の数学・物理の補講など学力面でのフォローが必要になるケースがあるという。

「選抜で数Ⅲを課さなかったことから学力担保のために入学まで学習フォローをしており、それを課題だと回答した大学もありました。各大学の方針によるところですが、一定の学力を担保したうえで多様な人材を選抜する設計は必須ではないかと思います」

「逆差別だ」などの否定的な意見にどう対応するか

女子トイレの増設やロッカールームの設置といった設備整備や、メンター制度の構築など女性学生が相談しやすいサポート体制も課題だという。

「女子枠を導入したばかりの大学では、どうしても目の前の入試や広報に力が注がれがちで、今後は女子学生が学びやすい環境整備が進むことが期待されます。また、理系女性の就職は引く手あまたですが、博士課程のキャリアサポートが課題。博士号人材向けの奨学金や若手女性研究者への研究費支援などの経済的サポートも充実させる必要があると思います」

また、女子枠入試に対しては反発の声もある。今回の調査でも、女子枠の導入に当たり、「逆差別だ」など内外からの否定的な意見があった大学は、45.5%と約半数を占めた。この点について大洲氏は、大学側の丁寧な説明が必要だと指摘する。

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