6月も要注意、若手から管理職まで知っておきたい「教員のメンタルヘルス対策」 年代問わず増えている「職場や保護者」の悩み

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――メンタル不調に陥る教員の背景として、顕著な特徴はありますか。

これまでは学級崩壊など生徒指導に苦慮してきた教員の方々が最も多く、3~4割を占めていたのですが、最近では同僚や上司など職場の人間関係がつらいと訴える方々が年代問わず増えています。コロナ禍対策が落ち着いた頃から様相が変わってきて、驚いています。

推測になりますが、指導の大変さがなくなったわけではなく、むしろ常態化していて、その苦しさから救われたいと思う期待が同僚や上司に向かうようになったのかなと。そこで人間関係がうまくいかなくなると、調子を崩してしまうのかもしれません。また、保護者対応の悩みで診察に来られる先生方も増えており、子どもとの関係ばかりではなく大人との関係が不調の背景にあると感じます。

――皆さん、ご自身の不調を自覚してすぐに病院へ足を運ばれるのでしょうか。また診断後は、どのようなプロセスで回復されるのでしょうか。

体調の異変や苦しさを感じつつも、仕事は続けたい一心で年単位で我慢してしまうなど、ギリギリまで頑張った末にやっと病院に来られる方が多いですね。

その後は、仕事でご本人が悩んでいる場合や、治療しながら仕事を続ける場合は、教頭や校長など管理職の方もお呼びして話し合いをします。現場は人手不足のため、もし休職となると学校運営にダイレクトに影響が出るので、皆さん積極的に来られますね。ご本人の受け止め方と周囲の見方が違うこともあるので、現場との情報共有は大切です。

治療しながら仕事を続ける場合ですと、授業以外の校務分掌は一時的にはずしていただくなど、とにかく仕事を減らすようお願いしています。環境調整がうまくいって薬が合うと、早ければ2週間ほどで効いてきて、そのまま回復される方もいらっしゃいます。

適応障害の場合は不調の原因が明確ですので、原因の軽減を目指します。例えば部活動をはずしていただくなどの調整をしてうまくいくケースもあります。

「一見、元気な人」にも落とし穴がある

――長らく教員の精神不調の問題が解決されない理由は、どこにあると思われますか。

学校現場では、年々「〇〇教育」などビルドアンドビルドで課題が増えており、その対応に追われています。コロナ禍以降は、ICTの活用も推進されています。取り組むべき課題が増えるほど付随する問題も出てきますので、対応しなければならないことがどんどん増え、人手不足も相まって大変さが増しているのではないでしょうか。

――学校におけるメンタルヘルス対策として重要なポイントについてお聞かせください。

最近口数が少なくなったとか、1人でいることが多くなったとか、ちょっとした変化がサインになることはありますが、精神疾患の発症は本人も周囲も気づかないことが多いもの。一見、元気な人にも落とし穴があるんです。とくに過重労働に慣れて疲労感を感じなくなっているときは危険で、その状態でやりがいが損なわれる出来事が起こると、急に落ち込んで一気に疲れが出て急激に落ち込んでしまいます。

この時期ですと、元気に頑張っている新規採用教員の方にも注意が必要です。ニコニコしていても、本人は不調を自覚していることがあります。順調にやってきたベテラン教員も、「自分でやったほうが早い」と仕事を抱え込む、率先して難しいクラスを持つといったことが長く続くと落ち込みやすい傾向にあります。

そのため、ラインケアにおいて管理職は常日頃から職員間の信頼関係を築くこと、セルフケアでは自分の状態に意識して目を向けることが重要です。

また、調子がよいときと悪いときでは、力点を変えなくてはいけません。本人の調子がよいときにおいては、やる気をかき立てるようなラインケアや、理想を持って頑張るようなセルフケアで、生き生きとしたよい循環をつくることができます。しかし、不調のときはそうしたケアではむしろメンタルを害するため、今できることを着実にやるようなケアにシフトしていくことが大事です。

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