京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ
株価もこの市場関係者の不満を反映しているかのようだ。OLC株1%売却と増配の発表を受けた4月30日、京成電鉄の株価(終値)は5893円と前営業日終値比で0.6%下落した。株式市場の反応は冷ややかだった。
「これが株式市場の評価だ。しぶしぶ、1%を売ったことが市場に見透かされている。これでは(この程度の規模の売却では)ダメでしょう、というのが投資家の大半の見方ではないか」(別の市場関係者)
京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた。
京成電鉄は明治時代の1909年に、成田山新勝寺の参拝輸送を目的に設立された「京成電気軌道」を起源とする。その後、東京への延伸を繰り返し、1960年には「押上ー浅草橋」駅間を開業。東京圏の需要は大きく、安定成長していった。
京成にとってOLC株は「打ち出の小槌」
一方、OLCの設立は1960年。浦安沖の海面を埋め立て、商住地域の開発と一大レジャーランドの建設を行い、国民の文化などに寄与することを目的に創業した。
OLCの設立に大きく関わったのが、当時の社長であり、京成電鉄の「中興の祖」と言われる川崎千春氏だ。アメリカでディズニーランドを体験した川崎氏は、帰国後、三井不動産の江戸英雄社長(当時)らとともに、「オリエンタルランド設立計画趣意書」をまとめた。
OLCが創業時に事務所を置いたのは当時の京成電鉄の本社(東京都上野)でもあった。
その後、京成電鉄は「打ち出の小槌」のようにOLC株を少しずつ売却して、設備投資や自己株買いの資金として充当してきた。2023年9月末時点での保有比率は20%弱。筆頭株主ではあるが、子会社ではなく持ち分適用会社となっている。
ところが、京成電鉄の時価総額1兆円強に対し、OLCの時価総額は7兆9000億円(ともに5月8日時点)。京成電鉄の保有比率に換算すると、京成電鉄が持つOLC株の時価は京成電鉄の時価総額を上回ることになる。
この「資本のねじれ」につけ込んだのが、2021年に設立されたパリサーだ。
パリサーの創業者で最高投資責任者であるジェームズ・スミス氏は、エリオット・マネジメントの出身。アメリカの投資ファンドであるエリオットは、「武闘派」のアクティビストとして知られる。
しかし京成電鉄は、折衝力に長けるパリサーに対し冷静な姿勢をこれまで崩さなかった。「パリサーは京成電鉄の老獪さに翻弄されているかのようだ」(市場関係者)との見方まである。
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