注目キャラクターの1人目は大坂城の城主でもある五大老のひとりで、石田三成がモデルの石堂和成。海外でも名を上げる平岳大の演技力もあって、憎たらしくも政治力のある石堂に惹きこまれます。2人目は淀殿をモデルにした太閤の側室・落葉の方です。ドラマ「VIVANT」に「Eye Love You」と国内人気作に出ずっぱりの二階堂ふみが存在感ある演技で魅せます。悠々と句を詠むだけでなく、鋭い眼光で乱世の動きを読む姿がハマっています。
そして、3人目は浅野忠信が演じた虎永の家臣の樫木藪重です。流れの読み方は浅くも、小賢しく動き回り、根は悪くない人間味のある人物像の作り込みはさすがです。浅野の藪重の視点で物語を追っていくと、虎永が形勢逆転できた理由まで納得でき、最後の最後までより楽しめるはずです。視聴者目線のキャラクターとして浅野の役柄に重要な役割を持たせています。
主演の真田以外の日本人の役者のキャスティングは、日本側で行われたこともあって、⻄岡德⾺をはじめ馴染みのある役者から注目新人まで出演していることも受け入れやすくしています。
海外視点の解釈に寛容さが必要だ
一方、史実にはない間違い探しをする見方もあるでしょう。登場人物のモデルはあくまでもモデルであって、そこにとらわれずに見ることをオススメします。そもそも日本の乱世を海外からの視点で切り取っている物語なのです。アメリカをはじめ、海外の視聴者を意識して作られていますから、解釈の仕方に多少の寛容さが必要そうです。
むしろ日本人の精神や死の捉え方、自然観を強調したせりふや演出に新鮮味を覚えます。「そなたは己の務めを果たす覚悟はできておるのか?」と真田がすごみのある表情で言い放つせりふは、死をも伴う忠誠心を問うものであることを伝え、また地震の描写では倒壊した家を何度でもすぐに再建できる力があることを映し出しています。本音を隠しがちな日本人を理解するために通詞の鞠子が按針に「耳ではなく、心で聴く修行をなさいませ」と言うせりふなどは、日本が神秘的な国として捉えられていることを表しています。
製作したディズニーグループFX会長のジョン・ランドグラフ氏に直接話を聞くと、日本の歴史ドラマを扱うにあたって900ページに及ぶマニュアルが作られたことがわかりました。役者からスタッフまで全員がそれに目を通したそうです。「完璧主義者とも言える真田さんのこだわりもあって、細部にわたって、誠実に表現した。フェイクではないものを感じてもらいたかった」とも語っていました。
所作などの細かい部分で意外と大きな違和感が生まれますから、その辺りはできる限り注意を払ったことが劇中からも伝わってきます。
公式の発表によると、2月27日の配信開始直後、6日間で900万回再生され、一般ドラマ部門で歴代1位の視聴記録を作り出しています。重要視される初動の数字が成功したことは大きいでしょう。トルコなど他国では歴史ドラマを入り口に海外の視聴者の興味が現代劇にまで広がった事例もあることから、「SHOGUN 将軍」が作った実績に日本を舞台にしたドラマの今後にポテンシャルを感じたくなります。
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