元アナウンサー・久保田智子が「姫路市教育長」に転身した深い訳 トップ交代の「変化」は現場を変える手段になる

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――周囲に褒めてくれる人がいるかどうかは、子どもの育ちに大きく影響するでしょうね。

小学校低学年のとき、全然勉強についていけなくて、先生から保護者面談で「このままでは心配です。不良になると思います」というような言われ方をされました。母からそのことを聞いて私は大きなショックを受けました。

その後は母の助けもあり、勉強ができるようになったのですが、小学6年生にもなると今度は「極端な優等生」になりました。友達が校庭の毛虫を足で踏んづけようとすると、毛虫を庇うような子です。

そんな私を先生が見て「久保田さんは、いい子だね」と言われたことがとても印象に残っています。そのとき「やっといい子になれた」と思ったことが、その後の私の支えとなってくれたのです。先生にとっては単なる一言だったかもしれませんが、褒められることはそれほど子どもの自己肯定感につながっていくのです。

子どもたちのできないことでなく、できることに注目して、伸ばしてあげられたら。その積み重ねによって自己肯定感は高まっていくのではないかと感じます。そんな取り組みも取り入れていきたいと思っています。

久保田智子(くぼた・ともこ)
姫路市教育委員会 教育長
1977年生まれ。広島県出身。東京外国語大学卒業後、2000年にTBS入社。アナウンサーとして『筑紫哲也NEWS23』『報道特集』などを担当。2015年結婚を機にTBSを退社して渡米し、コロンビア大学大学院にて修士号取得。2018年に帰国後、2020年にジョブリターン制度を利用し、報道記者としてTBSに復職。2024年3月末にTBSを退職し、4月より現職

「現場に耳を傾け、課題の本質を考える」経験を糧に

――姫路市の教育課題については、どう認識されていますか。

姫路市は、それぞれの地域性が強く、それぞれが特有の問題を抱えています。例えば、山間部は人口減で過疎化が進み複式学級になっていて、人数が少ないために多様な関係性の中での主体的・対話的で深い学びを実現しにくい環境にあります。

一方で、都心部は新しい戸建てやマンションがたくさんできて、新たな学校が必要になるなど、姫路市としてひとくくりに教育の設計をしていくのは難しい。学校の統廃合などの議論もあり、これからどう考えていくのか。現場の事情について今後ヒアリングを重ねていきたいと考えています。

――学校現場についてはいかがでしょうか。

姫路市もほかの自治体と同様に不登校問題が深刻であり、全国比で見ると割合は高くなっています。これまでも魅力ある学校づくりは進められてきましたが、「学校に行きたい」と思われる学校づくりをさらに推進したいです。

たとえ魅力があったとしても、それでも学校に行けない子どもたちもいます。子どもたちには学校に通うことだけでない多くの選択肢があったほうがいいはずです。また、予防も大切だと感じています。子どもが「学校に行きたくない」と言うときには、もう追い詰められて限界の段階であるとよく言われています。その前に気づくことができればケアができる。早期のSOSを察知して対応する仕組みも大切だと思っています。

さらに、不登校に対する偏見をなくすなど、学校や保護者が不登校の子どもたちにどう向き合うのかについて啓発なども必要だと考えています。

――教育長として、これまでの自身の経験や実績、また強みがどのように役立つと考えていますか。

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