ギャンブル依存「いつか勝つ」が難しい数学的根拠 負け続けた結果、一気に挽回を目指しても…

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たとえば最初は1万円を賭ける。それに負けたら2万円を賭ける。また負けたら次は4万円を賭ける。そのように負けたときは次に倍の金額を賭けることにすれば、いつかは勝って、勝ったときにはトータル1万円の利益である。たとえば、1回目から3回目までは負けて4回目に勝ったならば、1万円、2万円、4万円がマイナスで8万円がプラスなので、トータルで1万円を得ることになる。そして勝ったときの次は、再び1万円の賭けから始める方法である。

上の説明をすると、「これは必勝法ではないか」と思う人が多いのである。中には、「場所代も払うことを考えると、結局はマイナスになるだろう」、と言う人もいる。

「いつかは勝って」は難しい理由

この考え方の問題点は、「いつかは勝って」の部分にある。「n回目までに必ず勝つという自然数(正の整数)nはあるのか」と自問すればすぐに分かるように、nをいくら大きい自然数としても、そのような自然数はない。一方、どんな資産家でも賭けに使えるお金には上限があり、すなわち連続して負けられる回数には最大の自然数があるので、その回数を超えないうちに勝たなくては、マーチンゲール法の考え方は成立しないのである。

上記の文は拙著『新体系・大学数学 入門の教科書(上)』(講談社ブルーバックス)からの引用であるが、根本には論理的に厳格に述べる文では「すべて」と「ある」の用語をきちんと使う必要があることを示し、極限の概念を展開しているのである。

一旦、ギャンブル依存症に罹ると、いくら数字を使って説明しても、危険性に耳を傾けなくなる。実際、筆者はポアソン分布という死亡確率のような「稀に起こる事象」を扱う統計分布を使って、パチンコで大当たりが何回か出て「勝って帰れる」確率を90年代に計算したことがある(データは実際にとって定めた数値)。

1球当たり大当たりになる確率は3333分の1、1時間に5000球打てるとして、その間に大当たりが4回以上出る確率はなんと約6.6%である。ちなみに、拙著『新体系・大学数学 入門の教科書(下)』(講談社ブルーバックス)では、ポアソン分布に関する丁寧な証明も述べ、上記の算出方法も「問題」として説明している。

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