蕨市立北小学校、校内研究を「フェス」形式で開催したら変わったこと 「やらされる」から「やりたくなる」校内研究へ
そこで、研究の“進め方”に主眼をおき、教職員それぞれが学びたいテーマでグループ研究を行うことに。1年目は「ICT」「学び合い」「学級経営&係&宿題」「自由進度学習」「体育」「遊び&PA」と6つのグループに分かれ、研究が始まった。ところが、早くも壁にぶちあたったという。
「全員の合意のもとでスタートしたのですが、初めての試みということもあり、グループ内でのチームワークがとれず、『これは校内研究と言えるのか』という意見が出始めたのです」と、花岡氏。当時はコロナ禍で、対面の機会が限られていたことも影響したという。
対話会「どんな校内研究が幸せですか?」
そこで力を入れたのが、「グループ同士の情報共有」と「対話」を増やすことだった。

埼玉県蕨市立北小学校
研究主任(2022〜2023年度)
(撮影:長島氏)
2022年度から研究主任を務める小林千尋氏は、「お互いのグループが何をしているのか見えにくいと、グループ同士のコラボなどの動きも出にくいもの。職員室に校内研究の専用ボードを作って各グループの実践や研究プランを書いたポスターを掲示してもらい、研究内容や進捗の“見える化”を図りました。
また、本校には、休憩時間に教職員が任意で集まり好きなことを学ぶ『キタカフェ(北カフェ)』があります。その場を活用し、研究に関することはもちろん、リースづくりなど研究とは関係ないことも一緒に楽しむことで、教職員同士の距離を縮めていきました」という。
当時、都内の公立小教員で、現在はベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター研究員を務める庄子寛之氏がアドバイザーとして関わり始めたのも、この頃だという。
「学校外の学びの場で庄子先生とお会いしたことをきっかけに、研究2年目の2022年の夏、庄子先生を本校に招いて『どんな校内研究が幸せですか?』という問いで対話会を行いました。働き方改革が進み、研究にかけられる時間も限りがある中、対話会で多くの教職員から出てきた言葉は『持続可能』でした。身を削って準備して『すごい研究だけど、真似できない』と言われるよりも、フィードバックを重ねた日々の実践の積み重ねを見てもらい、『明日からやってみよう』と、小さなお土産を持って帰ってもらえるような研究をしていこうという空気が生まれました」と、小林氏。
「これまで教職員のモチベーションベースで研究をしてきたわけですが、『子どもでなく、教員が主語の研究でいいのだろうか』という疑念も、心のどこかにありました。でも、庄子先生が『(これまでの)方向性は間違っていない』と背中を押してくださったことで、迷いがふっきれた気がします」
こう話す花岡氏に松原氏も続く。
「自校の教職員だけだと自己満足で終わってしまいがちな側面もある校内研究ですが、外から第三者の立場で冷静にご意見をいただけて、前に進むことができました」
「仮説生成型」の校内研究とは
研究3年目。またしても試練が襲う。異動により、何と半数近くの教職員が入れ替わってしまったのだ。
「これまで研究を支えてきてくれたミドルリーダーの先生方がこぞっていなくなり、振り出しに戻ってしまった感がありました。正直、きつかったですね」と、花岡氏は振り返る。しかし、2年かけて培ってきた対話の土壌は、同校に確実に根付いていた。
「新しく来た先生たちを、とにかく巻き込もうと。残った先生方が、新しく来た先生たちにグループ研究のよさを知っていただけるようこまめに声をかけたり、キタカフェに誘ったりして関係性を深めていきました」