この問題をどうしていくのか
では今後、どう解決していくのかというと、そう簡単な話ではない。
約2割も占める非正規雇用に頼らず、正規職の採用を増やしたり、正規への転換を図ったりすることが筋だが、そんな予算があるのかという問題が1つ。また、急激に進む少子化で将来、教員が過剰になる可能性もある中で、おいそれと正規職を増やせないというのが、採用を担当する各都道府県・政令市の言い分だろう。
だが、こうした事情は、文科省や各教育委員会にはわかりきっていたことだ。困難も制約も大きいが、だからこそ、どんな制度や仕組みが必要なのか、アイデアと知恵を出していく必要があると思う。
一例をあげると、常勤講師として子どもたちのために、いくら優れた教育活動等ができても、正規職の採用試験上有利になるわけではない(一般教養試験が免除される自治体はあるが、ほかの筆記試験や面接で落とされるケースもある)。私は、勤務先の校長の評価等によって、採用試験上有利にする仕組みがあってよいと思う 。
それどころか、来年度からは採用試験の一部前倒しの動きがあり、文科省は6月中旬を標準日としている(標準日にそろえる義務はない)。常勤講師をしていると、学校が忙しすぎて採用試験対策をする暇がなくなる、というケースはこれまでも多かったが、事態は一層悪化するだろう。
4~6月は学校が最も忙しい時期だからだ。こうした文科省と教育委員会の動きは、講師の先生にとってはいっそう厳しい仕打ちであり、講師のなり手不足を自ら助長しているとも言える。
先にも述べたが、子どもたちにとっては、正規も非正規も関係ない。場合によっては一生ものの影響がある。正規職にとっても、非正規職にとっても、いきいきと働き続けやすい学校にしていきたい。
参考文献
・佐藤明彦(2022)『非正規教員の研究:「使い捨てられる教師たち」の知られざる実態』時事通信社
・山﨑洋介、杉浦孝雄 、原北祥悟、教育科学研究会編著(2023)『教員不足クライシス:非正規教員のリアルからせまる教育の危機』旬報社
・妹尾昌俊提出資料、中教審・質の高い教師の確保特別部会(第10回)令和6年3月13日
(注記のない写真:8x10 / PIXTA)
執筆:教育研究家 妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部
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