先生全体の約2割「非正規教員」の悲痛な実態、処遇改善に求められる思考 「期間限定、契約更新は未定」、教員不足に直結も

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なぜ、非正規の問題を扱うのか

まず、同じような仕事をしているのに雇用が不安定で、処遇も低く抑えられていることが多いのはおかしい。

しかも、地方公務員法上は、常勤講師があたる臨時的任用は「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合において、緊急のとき、臨時の職に関するとき、又は採用候補者名簿がないとき」という例外的な措置であり、「六月を超えない期間で更新することができるが、再度更新することはできない」となっている(第二十二条の三)。

だが、あとで述べるように、臨時的任用は近年増え続けており、緊急的、臨時的なものというよりは「常態化」しているのが実態だ。年度ごとに契約は切れるとはいえ、数年にわたって講師を続けている人も多い。

学校には、やけに細かなルールや指導法まで口を出す教育委員会もあるのに、多くの教育委員会は、この地方公務員法の規定については、事実上無視しているような運用をしてしまっている。

「同一労働・同一賃金」とはほど遠く、子どもたちの身近にいる教員や教育行政がこれでいいのだろうか。ここでは扱わないが、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、給食の調理員、スクールサポートスタッフなど教員以外の職でも非正規雇用は非常に多い。

この問題を扱うもう1つの理由は、ここ数年、全国的に深刻化している教員のなり手不足と密接に関連するからだ。教員不足は「欠員」とも呼ばれ、本来配置する予定だった人数を配置できないでいる状況を指す。

教員不足が起こるのは学校のせいではないが、欠員状態となった学校では、専門外の教科を教えざるを得なかったり、支援学級などでころころ担任が替わったりするケースもある。子どもたちの学びやケアに直結する大問題だ。

全国公立学校教頭会の調査(2023年度)によると、2022年度は約2割の小中学校で欠員状態の時期があった。新学期がスタートするこの4月も十分に配置できない地域が出てくる可能性がある。

教員不足の多くは、非正規職である常勤講師(臨時的任用教員)のなり手がいないことが原因である。ただ、受験者数の減少や内定辞退によって、正規の教員が見込みよりも採用できないケースも一部の自治体で出てきているので、教員不足=講師不足とは言い切れない部分もあることにはご留意いただきたい。

まずは、欠員補充の仕組みから説明しておく必要があると思う。産育休や病気休職の人が出ると(もしくはそれを見越して)、通常は常勤講師(臨時的任用教員)の登録者名簿の中から選ばれる。教員採用試験に受からなかった人に講師登録してもらうことが多い。ただし、正規教員はハードワークなので、あえて非正規職のほうを望む人、定年や育児・介護などの理由で以前退職した人が講師登録をするケースなどもある。

不足を見越してはじめから正規の教員を雇っておくとなると、国・自治体にとっては、後年度の負担も含めて大きな財政支出となるし、産育休などはあとで正規職が復帰してくるのだから、非正規雇用が雇用の調整弁になってきた。「必要悪」と述べる専門家もいる。

そして、以前は教員採用試験の倍率も5倍以上などと高く、不合格者がたくさん出ていたし、何年か講師として経験を積んででも、正規の教員を目指したいという人も多かったので、講師登録者はかなりあった。

しかしここ数年、自治体によっては採用倍率が低くなっており不合格者数は以前より少ない。しかも、民間就職なども活況なので、年度途中から「学校で働いてくれませんか」と言われても、すでに民間などに就職済みの人は多い。こうした結果、各地の講師バンクは払底しており、産休・育休の代替すら見つからないケースも多くなっている。

非正規雇用はどのくらいいるのか

学校で、どのくらいの数の非正規雇用があるのか。文部科学省の資料でほとんど出てくることはない。

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