下請けに「代金減額」、日産へ注がれる厳しい視線 経済好循環を阻む「甘えの構造」に公取がメス
日産は1月末に減額した金額を返金、割戻金の運用も廃止している。公取の勧告を受けた同日には「法令遵守体制の強化を行うとともに再発防止策の徹底に取り組み、今後の取引適正化を図ります。広く関係各署に多大なご迷惑をおかけしましたこと改めて深くお詫び申し上げます」といった文書を開示。
前述のように「一部メディアに限った」会見で内田社長が謝罪もした。もただ、「開かれた」記者会見の場で説明や謝罪はしておらず、さかのぼって調査するかも明確にしていない。
ある日産系部品メーカー関係者は、「部品の仕様変更による臨時の値下げ要請もある。日産からは『もっと安くなるはずだ』と言われて押し切られるときもある」と憤る。別の日産系部品メーカー幹部は、「内田社長は調達畑の出身。責任を問われないのか」と疑問を投げかける。
社会からは厳しい声が飛ぶ。島根県の丸山達也知事は3月13日の記者会見で、「日産は過去3年間にわたる減額分を返したというが、利息を払わないとダメ」「下請けは利息を払えなどと言ってこないと高をくくっている」「3年より前は確認したのか」「経済取引上の強盗だ」などと批判した。
業界に蔓延している
立場の強い発注元が発注先に厳しい価格要求をするのは、どの業界にもあることだ。とりわけ自動車業界はこうした慣習が浸透していることで知られている。日産だけが問題かというとそうではない。
2004年以降、公取が勧告した自動車業界の減額事件は今回の日産を加えると14件。これとは別に2021年には、マツダが部品メーカーから不当な手数料を徴収していたとして下請法違反で勧告を受けている。また、公取は下請け業者のコスト上昇分を適切に価格交渉しなかったなどとして、2022年にデンソーや豊田自動織機、この3月15社にはダイハツ工業や三菱ふそうトラック・バスの社名を公表している。
もっとも、事件化するのは氷山の一角に過ぎない。
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