ANAとJAL、「航空チケット値上げ」で決算に異変 ANA優位はいつまで続くか?カギ握る2つの戦略

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2つ目は原価の高騰だ。ウクライナ問題や円安の影響を受け国内のエアラインが調達する航空燃油の価格が上がっている。原価の上昇を価格に転嫁しているため、値上げが続いているのだ。

国際線の旅客は、海外渡航をする日本人客、訪日外国人客、乗り継ぎ外国人客の3種類に分けられる。2024年は徐々に海外旅行をする日本人の増加、米中直行便の回復による乗り継ぎ外国人の減少など、業界環境が変わっていくことが予想される。

どのように高い運賃を維持し、収益を確保していくか、両社の戦略が問われることになる。

JALは1月24日から、羽田―ニューヨーク線に新型のA350-1000型機を投入する。写真は就航式典での赤坂祐二社長(記者撮影)

羽田事故よりも深刻なANAの機材問題

そしてもう1つ重要なのが、機材戦略である。

ANAはアメリカのプラット&ホイットニー社のエンジン問題を受け、点検作業が必要となっている。ANAは1月から3月まで国内線と国際線合わせて1日30便程度減便すると発表した。シェアを維持するためにも、一部機材の退役延長やエンジンの調達などで対応する構えだ。

業界関係者は「ANAの機材繰りノウハウがあれば影響は大きくないだろう」とみる。

ただ、運航を停止するエアバス社のA320neoとA321neoは小回りの利く小型機。運航コストが低く、旅客の少ない路線でも収益を出すことができる。今回の運航停止を受けて、機材繰りの問題で旅客が少ない路線に中・大型機などを運航することになる局面も出てくるだろう。

他方、JALは1月2日に発生した羽田空港での衝突事故を受けて、国内線の主力機材であるA350-900を1機失った。JALは新たに同機材を調達する予定を明らかにしている。

ただA350を失った影響について「供給インパクトとしては1%、3カ月では10億円」(斎藤氏)と決算会見で説明したように、影響は限定的だ。機材問題はANAのほうが深刻といえるだろう。

とはいえ収益力にとって重要なのは、国際線のチケット単価。機材問題でANAとJALの差は縮まる可能性は高いが、チケット単価が高止まりしている間はANA優位が続くことになるだろう。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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