何十冊ものノート、女性ホームレスの思索の営み 『小山さんノート』書評

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『小山さんノート』小山さんノートワークショップ 編
小山さんノート(小山さんノートワークショップ 編/エトセトラブックス/2640円/288ページ)
[著者プロフィル]小山さんノートワークショップ(こやまさんのーとわーくしょっぷ)/小山さんが遺した手書きのノートの文字起こしや、小山さんが歩いた道をたどるフィールドワーク、路上朗読会などを行う。2015年3月に活動開始。メンバーは野宿者、ひきこもり、非正規労働者、アーティスト、留学生、研究者など。

小山さんと呼ばれていたその女性の、下の名前はわからない。名前だけでなく、いつどこで生まれ、どんな人生を歩んできたのかも。

東京都内のある公園、「人通りが少ない木々の間に、ブルーシートで作られた小屋やテントがひっそりと立ち並ぶ」テント村の一角に暮らしていた。2002年施行のホームレス自立支援法が「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と定義する人々の一人だ。

女性ホームレスのライフストーリー

13年に彼女が亡くなったとき、残された荷物の中に何十冊ものノートがあった。生前交流のあった人々によって散逸を免れ、何年もかかって文字起こしされた膨大なテキストから、ごく一部を抜粋して本書は編まれている。一人の女性ホームレスのライフストーリーであり、類を見ない日記文学であるとも言える。

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