探究的な学びが重要視される中、それがなかなか簡単ではない現状を以前書きましたが、まさに自由進度で学ぶこと自体が、自ら学ぶ探究の入り口になっているのです。
中村さんも、「教科学習と探究学習を区切るのではなく、つながりの観点で捉えてほしい。eboardのコンテンツを探究の素材として使ってほしい」と言います。2人の話を聞いていて、大事なのは子どもたちの学びに向かう姿勢なのだと改めて気づきました。
教えてもらわなければわからないし、できるようにならないという受け身の姿勢と、わからないからこそ、知りたいと思い自分からつかみにいく姿勢。どちらのほうが学びが深まるかは自明の理です。
とはいえ、一斉授業が主流の公教育の現場で自由進度学習が広がっていくには、蓑手さんの言うように、学びに対する考え方を180度変えていくことが必要そうです。
どんな環境でも、学びのチャンスを届けたい
一方、今問題になっている不登校の児童生徒への適応は、すぐにでもできるのではないかと思いました。実際、特別支援級や通級の現場で使われている事例も多いそうです。
また、日本にはホームスクーリングを支えるプログラムが少ないと言われるけれど、不登校や行き渋りで授業を受けることができない子どもたちにも、ぜひ知ってほしいツールです。
学習記録が残らない形でなら、家庭での個人利用について無料で利用でき、さらに塾や習い事に通うのが経済的に難しいご家庭、発達障害や認知特性などからほかの教材での学習が困難なお子さんに限り、学習記録が残るアカウントも発行するという手厚さ。
これも、「誰でも、どんな環境にあっても学ぶことをあきらめてほしくない」という中村さんらの思いがあるからです。
「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実という文科省の資料には、2030年の社会と育成を目指す資質・能力について、以下のように書かれています。
しかし、このような時代だからこそ、子供たちは、変化を前向きに受け止め、現在では思いもつかない新しい未来の姿を構想し実現したりしていくことができる。(途中略)
そのような主体性を育むためには、与えられることを待つのではなく、自ら学習する自己調整学習を学校教育の中で実現していくことも必要ではないでしょうか。
ICT教材や自由進度学習について、いろいろな意見もあると思いますが、子どもたちの生きる力を育てるためには、どのような学び方がいいのかという視点で、それぞれの現場でも考えてもらえたらと思います。
(注記のない写真:つむぎ / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
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