この言葉が注目されるきっかけになったのは、新型コロナによる一斉休校でした。子どもたちの学びを止めないために、それ以前からあったGIGAスクール構想が一気に進み、1人1台の情報端末が配られ、ICTを活用した「個別最適化学習」が可能になりました。それに伴って、さまざまなICT教材や学習システム、教育クラウドが学校現場でも用いられるようになってきています。
教員の過重労働や教員不足が問題になっている中で、個別に最適化された学びを実現するためには、ICTの活用は欠かせません。ただ、教育現場でICTを効果的に活用するには、教員の役割も重要です。
そこで今回は、ICT教材の1つ「eboard」を生み出したNPO法人eboard代表理事の中村孝一氏と、自由進度学習を公教育の現場でも実践してきたHILLOCK初等部の蓑手章吾氏に話を聞きました。
「いつでも、どこでも、誰でも、無料で」学びを支えるICT教材
eboardは、「誰でも、どんな環境にあっても学ぶことをあきらめてほしくない」という思いから、中村さんが脱サラして2013年に立ち上げたNPO法人eboardが開発・運営する学習教材です。
日本におけるオンラインの映像授業の先駆けで、現在1万1000校以上で使われ、毎月20万〜30万人が利用しており、公立学校や個人は、無料で利用することができます。小中学校の学習指導要領に沿って作られており、小学1年生から中学3年生まで(現在高校分野も作成中)の学習内容が一通りカバーされています。
その特徴は、ネット環境があればどの端末からでもすぐに使えること。学び方や認知に凸凹がある子にも配慮した学習画面であること。一本平均7〜8分と短く、内容に集中できる講師の顔が見えないスタイルであること。字幕をつけていて、わかりやすいことなどが挙げられます。
実際公開されている動画を視聴すると、学校や塾の授業よりも、くだけた口調で親しみやすく、1つひとつていねいに解説されていました。学年や進度による制限がなく、どの学年の単元も好きな順序で学習できるのも特徴です。

(写真:eboardホームページより)
ICT教材の中には、AIを活用して、受講者の学習状況に合わせて、自動的に次の問題を出してくるリコメンド機能を備えているものもありますが、eboardではあえてつけていません。