「能天気な人」と誤解されてしまう危ういクセ 「人とは笑顔で接する」が常に正解とは限らない

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対人関係において笑顔をデフォルトと考えることで、笑顔がクセになる、笑顔が適切ではない場面でも笑顔で対応してしまうことは、日常生活やビジネスの場面でまま目にします。こうした笑顔は他者に誤解を与えかねません。ではどうしたらよいのでしょうか?

ポイントは、言動一致です。自身の話す言葉と表情を一致させる。例えば、「申し訳ない」という言葉なら、悲しみ表情や恥、罪悪感表情で伝えるのが適当でしょう。

接客時、「謝罪」を笑顔で伝えてしまうから、「本当に申し訳ないと思っている?」と疑問に思われるのです。某食品会社の社長や昨今の裏金議員のように、謝罪会見を怒り表情で伝えてしまうから、「反省してない!」と炎上するのです。

何の感情がない状態でもさまざまに表情を動かせるようになることは一つのスキルです。しかし、伝えたい真の感情を心に宿す感覚は持っておくべきと考えます。それには、言葉と場面に込めたい感情を日々、考え続けることが肝要です。呼び水としての感情があるのとないのとでは、表情の見え方や伝わり方は異なります。

具体的なトレーニング方法を一つ紹介したいと思います(※)。

※本トレーニングは、ジョン・М・ゴットマン (著)、ジョアン・デクレア (著)、 伊藤和子 (翻訳)『ゴットマン式コミュニケーション術 ――自己診断テストでわかる改善と対策』パンローリング株式会社 (2021)p.332-p.333を日本人向けに使いやすいよう修正したものです。元のトレーニングや他のトレーニングも知りたい方は、本書をご参照ください。

3つのシチュエーションを想定

「大丈夫」

という言葉を次のシチュエーションに合うよう気持ちを込めて、口に出してください。

シチュエーション①:重要なプレゼンを前に緊張している同僚を元気づける意味で、「大丈夫」

シチュエーション②:不適切発言が目立つ部下を戒める意味で、「大丈夫?」

シチュエーション③:失恋をし、落ち込んでいる友人に共感を示す意味で、「大丈夫?」

①では、温かい気持ちが生じると思います。この感情を呼び水に、口角を引き上げ、目じりが下がるように、もう一回、気持ちを込めて、「大丈夫」。緊張している同僚の心は、ほぐれるでしょう。

②では、沸々と怒りが込み上げてくるでしょう。この感情を呼び水に、眉間に力を入れて、目を見開き、もう一回、気持ちを込めて、「大丈夫?」。部下は、「あ、マズいこと言ってしまっているかも」と気づくでしょう。

③では、友人の悲しみが伝わり、こちらも悲しくなるでしょう。この感情を呼び水に、眉の内側を引き上げ、眉がハの字になるように、もう一回、気持ちを込めて、「大丈夫?」。友人は、「自分の気持ちを受け止めてもらえている」と思い、癒やされるでしょう。

左からシチュエーション①②③の表情例(Ⓒ株式会社空気を読むを科学する研究所)
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