なぜインドと?ICT活用の交流が、鹿児島県の公立中学校を変えた理由 多くの日本人が気付く「こうしてもいいんだ」
この「こうしてもいいんだ」という発見は、教員にも大きな影響を与えた。英語やICTの苦手な教員も「生徒と同じ目線で一緒に学んでもいいんだ」と気付き、プログラムを共に楽しんだそうだ。
教科の授業も変わった。辻氏が授業中に校内を回っていると、プログラム実施前とは違う光景がいくつもの教室で見られたと言う。
「これまではどうしてもチョーク&トークになりがちで、生徒主体の授業にするには先生方にどうしてもらったらいいのかと私も考えていました。それがインドとの交流を経て、例えば国語の授業をのぞいてみると、先生が教壇に立たずに探究型の授業を行っているんです。数学の授業でも、子どもたちがグループワークをやっている。先生に聞けば『今は自由進度学習をやっています』と」
思い切りましたね、と辻氏が言うと、教科の教員たちは口々に「こういうふうにやってもいいんだ、と思えるようになった」と答えたそうだ。
家庭からも反響があった。帖佐中学校では保護者限定のYouTube配信をしているが、プログラムの様子を映した動画には「なぜインドなのか?」というコメントが多く寄せられた。辻氏が丁寧に説明を返すと、「そうですか、自分の固定観念を変えなければいけませんね」などとコメントがつく。このコメントをつけた保護者の家庭では、かなりの確率で、インドについての会話が生まれているとみていいだろう。「子どもたちも最初は『なぜインド?』と思っていたと思います」と振り返る辻氏。それが今や、家庭や地域をも巻き込んで変わり始めたのだ。
「学校とは本来、子どもだけでなく大人も共に学ぶ場所であるはず。働き方改革や地域格差が叫ばれる今日ならなおさら、一丸となって教育に取り組む必要があるでしょう。教員も保護者も地域も、みんなが共に学び続けられたらと思います」
(文:鈴木絢子、注記のない写真:yurakrasil / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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