台湾と韓国で同時台頭する政界「第3極」に注目せよ 世界秩序の歴史転換に日本は鈍感だ
韓国側では2000年に、当時の金大中大統領と金正日総書記の初の南北首脳会談が実現。台湾では2015年に、国民党の馬英九総統が習近平・中国国家主席との初首脳会談が行った。
だが和解は長く続かない。台湾では首脳会談によって中国の統一攻勢が強まることに反発する声が高まり、翌2016年の総統選挙で政権交代した。
韓国側を見れば2018年5月、トランプ・金正恩総書記との初首脳会談が実現、敵対関係に終止符を打ち、文在寅大統領も強力な後押しをした。
しかし2020年の大統領選挙では南北和解に消極的な保守派の尹錫悦大統領が当選。いずれも台湾と韓国で「敵」との和解の動きに、選挙でブレーキがかかった形だ。
第3極台頭の背景に中国あり
敵との和解にブレーキがかかる台湾と韓国の選挙結果は、2016年に誕生したトランプ政権が台頭する中国との米中対立を開始し、同時に同盟関係の見直しが背景にあった。バイデン氏が同盟関係を再強化する政策変更と連動している。米中対立の背景は、台頭する中国とアメリカの衰退だ。
台湾と韓国で「3極」が注目されるのは、敵との戦いを主要な争点にしないのは偶然ではない。両者が民主化を経て約30年続いてきた政治・外交の枠組みが中国台頭によって変わり始めている兆候だと思う。
歴史的にみれば、「大日本帝国」が台湾と韓国を植民地統治した時期を過ごしたことは、両者ともをほぼ同質の統治を共有した。日本の植民地支配が終わり、大戦後に「支配者」がアメリカに代わり、両者を独裁政権にするのが共産主義に対抗するうえで効率的というアメリカの意向があった。
民主化もグローバル化する世界で、急成長する両者を取り込むためというアメリカの意向が働いていた。
とするなら、アメリカ衰退と中国台頭という大状況の変化の中、台湾と韓国をめぐって「第3極」を模索する動きが同時に出てきたのは「必然」なのだ。
選挙の主要争点が安保から経済、民生重視に転換しつつある新状況は、アメリカに代わるパワーとして中国と向き合わねばならないと考える有権者の意識変化の反映だと思う。
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