共産党、初の女性委員長誕生で変化はあるのか 志位氏は議長に"昇格"で党運営の実権握り続ける

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また、委員長人事とともに注目されていた書記局長は小池晃参院議員(63―比例)の続投となり、小池氏の後継と目されていた山添拓参院議員(39―東京選挙区)は田村氏の後任となる政策委員長に選任された。

一方、議長に就任した志位氏は、2000年に不破哲三氏から委員長を引き継ぎ、23年にわたって党首として「君臨」してきた。ただ、ここ数年は国政選挙で当選者を減らすなど党勢退潮が目立つ。加えて、党員数や機関紙「しんぶん赤旗」の部数の減少にも歯止めがかからず、党内外から「委員長交代」の声が高まっていた。

党大会の締めくくりあいさつで志位氏は「(今大会は)歴史的な成功を収めた」と自賛。その後の記者会見では「女性と若手の登用で10年、20年先を見据えた党発展態勢づくりができた」と胸を張った。

一方、田村新委員長は記者団から野党共闘への対応を問われると「共闘態勢構築にできる限り力を尽くす」とし、安倍政権時代の新安保法制制定の際の国民的反対運動の盛り上がりに触れ、「国民の支援こそが共闘への大きな力となる」との考えを示した。

「志位院政」なら田村氏も前途多難

田村氏についてはすでに、次期衆院選で衆院にくら替えし、東京ブロックの比例候補として当選を期すことが決まっている。同党で現職参院議員が衆院にくら替えした例はなく、「そのこと自体が今回の田村委員長実現への布石だった」(党幹部)ことは間違いない。

その一方で志位氏が議長に“昇格”したことで、党運営の実権は握り続けることになる。今回の人事では、60年にわたって「党の理論的支柱」だった不破氏が中央委員を退任し、党運営への影響力もなくなるため。党内には「本格的な志位院政の始まり」(幹部)との声も広がる。

今回党大会の最終日の模様は、その後の記者会見も含めてユーチューブで生中継され、注目度の高さを示した。ただ、中継画面には「志位院政ではこれまでの共産党と同じだ」などの書き込みが相次ぎ、委員長交代への評価を上回った。このため、今後は党内外から「田村新体制による党体質刷新の前途は多難」などと指摘する声が広がりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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