なぜシャンパンタワーにドンペリが選ばれるのか 日本に欠けているラグジュアリーの視点と可能性

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これは、同一国内の高所得者層と庶民大衆の間のライフスタイルとは次元が違う非対称性であり、後発新興国の高所得消費者は、とにかくロゴを見て成熟国の文化財を買って買って買いまくる時期を必ず経る。

1920年代のアメリカで、まさにギャツビーが豪邸でパーティをしたような金ピカ時代がそれであり、日本はバブル期がそれにあたる。

これからがラグジュアリー展開の好機

そして、いよいよ日本は、自国で成熟した文化財を売る側に回る時が来たのである。ここでどうやって後発新興国の消費者たちに高く文化を売りつけるか。その手本は、やはりヨーロッパに求めるべきだろう。「唐様で売り家を高く売る三代目の時代」である。

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しかも、ラグジュアリーの世界では、顕示的消費の意義を、消費者の財力の誇示という古典的な目的のみならず、たとえば環境問題に関心が深いこと、マイノリティに同情的であること、などの「道徳的資質」を誇示する現代的な目的も併せて達成しようとする野心的な傾向が近年、顕著になってきている。

この動きを見ても、ラグジュアリー市場は、これからさまざまな産業分野が巻き込まれていく変化の震源地として、注目せざるをえないフィールドである。

こうした視点から見ても、大きな可能性がラグジュアリーの世界には潜在している。だからこそ、日本の側も今こそちゃんと、ラグジュアリーの世界を見つめ直し、理論も学び、その可能性を活かすべきだろう。

三宅 秀道 経営学者、専修大学経営学部准教授

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みやけ・ひでみち / Hidemichi Miyake

1973年生まれ。神戸育ち。1996年早稲田大学商学部卒業。都市文化研究所、東京都品川区産業振興課などを経て、2007年早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任研究員、フランス国立社会科学高等研究院学術研究員などを歴任。専門は、製品開発論、中小・ベンチャー企業論。これまでに大小1000社近くの事業組織を取材・研究。現在、企業・自治体・NPOとも共同で製品開発の調査、コンサルティングにも従事している。著書に『新しい市場のつくりかた』(東洋経済新報社)、『なんにもないから智慧が出る』(共著、新潮社)がある。

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