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MMT創始者「財政赤字でも金利は上がらない」 ビル・ミッチェル教授インタビュー【後編】

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ビル・ミッチェル(William Mitchell)/1952年生まれ。オーストラリア・ニューカッスル大学教授、完全雇用と公平センター(Centre of Full Employment and Equity:CofFEE)所長。MMT(現代貨幣理論)の創始者の1人(撮影:今井康一)
直接的な効果が現れる財政政策を重視し、間接的な効果を狙う金融政策の有効性を疑問視するModern Monetary Theory(MMT、現代貨幣理論)。長期的な財政均衡を目指す主流派経済学とは異なり、財政赤字や財政黒字の金額それ自体には意味がないと主張する。
 
なぜ金融政策ではダメなのか。莫大な政府債務を抱える日本でこれ以上、財政赤字を拡大することにリスクはないのか。MMTの創始者の1人であるオーストラリア・ニューカッスル大学のビル・ミッチェル教授に聞いた(インタビューの前編はこちら)。

――日本はインフレ2%目標に達した今でも金利を低く維持しており、これが円安の一因とも言われています。

輸入価格の上昇傾向はあるかもしれないが、それはたいしたことではない。多くの人は円が崩壊すると予想していたが、その予想は外れた。円の価値は少し落ちただけだ。

ほかの国々はいずれ金利を引き下げざるをえなくなるだろう。インフレ率は低下しつつあり、利上げが不況を生み出しているからだ。結果的に金利の差異は縮まる。実際、欧米の中央銀行が始めた金利上昇サイクルはすでに終わっている。

為替市場が日本円を完全に崩壊させる状況にはない。そんなことはありえない。

利上げによって問題が悪化

――諸外国が利上げをしている局面でも日本は金融緩和の姿勢を崩していません。通貨安が続く状況でも利上げせずにいるべきでしょうか。

なぜ利上げする必要があるんだ。今の状況を考えてほしい。世界全体がコスト上昇圧力に直面している。多くの人が日々の食事や電気代、家賃などに苦しんでいる。なぜ利上げによって問題を悪化させようとするのか。住宅ローンを抱える人々はより苦しむことになる。

私には諸外国が利上げをした理由が理解できない。

オーストラリア準備銀行の総裁は何度もこう言っていた。「公式の失業率は3.5%だが、実はNAIRU(インフレ非加速的失業率、以下に編集注)の見積もりは4.5%だから、金利を上げ続けないといけない。失業率がNAIRUを下回ったままではインフレが加速してしまう」と。

私はこの分野で博士号を取ったがこの論理はどう考えてもおかしい。実際には失業率は長期間3.5%で安定していて、2023年に入ってからインフレ率は下がり続けている。私はそもそもNAIRUという概念に懐疑的だが、その理論に従うと、失業率がNAIRUより低ければインフレ率は上昇するはずだ。彼らの政策には何の正当性もなかったということだ。

編集注:経済学には、失業率とインフレ率のトレードオフの関係を示した「フィリップス曲線」と呼ばれる概念があり、短期では失業率が低いほどインフレ率が上がると考えられている。NAIRUはインフレ率を上昇させない失業率の下限として理解される。
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