「甘えとの違いは?」今さら聞けない合理的配慮、3つの疑問と学校での進め方 2024年4月に私立学校や企業においても義務化
この学級には書くことが難しい書字障害の子もいますが、覚え方の多様性を踏まえた授業にしたため、個別的な支援はこの授業の間は不要でした。このように、授業の目的に合わせてはじめから多様な選択肢を用意することは、子どもの多様性を前提とした基礎的環境整備としてとても効果的です。

まずは国や教育委員会が用意している基礎的環境整備は何か、そして学校における基礎的環境整備はどうなっているか、もっとできることはないかといった点を整理しておくことがポイントです。とくに、40人学級で合理的配慮を必要とする子どもが多すぎるのであれば、基礎的環境整備の見直しから始めてみてください。
本人が学ぶうえでの「バリア」を明らかにする
次のような質問もよくいただきます。
前述のとおり、今の学校はマジョリティーの子どもを前提としているため、ある子どもたちにとっては社会的障壁が生じています。合理的配慮は、そのバリアを解消するために必要です。そのため、まず明らかにしたいのは、本人が学ぶうえでのバリアです。
例えば、車椅子ユーザーの子が「スロープやエレベーターを設置してほしい」と言うのは甘えではありません。歩く人を中心として学校が設計されていて、車椅子ユーザーの子どもが来ることが前提となっていないことが問題です。
同じように、「ちゃんと座って」「みんなと仲良くして」といった抽象的なコミュニケーションではなく、具体的なコミュニケーションのほうが理解しやすい子どもが、先生に「具体的に伝えてください」と言うのは、甘えでしょうか。学校が具体的なコミュニケーションをする子どもがいることを前提としていないことが、バリアになっているのです。
同じ障害種でも、何がバリアになっているかはそれぞれ異なります。合理的配慮では、学ぶうえで何がバリアになっているかを明らかにし、そのバリアを解消するためにどんなことが必要か、何が現実的にできるか、本人を含めて話し合うことがとても大切です。また、合理的配慮はやって終わりではなく、実際にその合理的配慮がバリアを解消できているかを確認し、見直しもしましょう。
合理的配慮は「宿題をやりたくありません」と意思表明したら宿題をやらなくてすむ、というようなものではありません。また、勝手に先生が「あなたには難しいから宿題はやらなくていいよ」というものでもありません。
宿題が問題となっているならば、宿題の目的は何か、宿題はマジョリティーの子(読み書きができる、親が宿題を見てくれる、一人で集中して取り組める子など)を中心にしていないかという点を見直す。そのうえで、本人の特徴を踏まえた時に生じている障壁を明らかにし、宿題の目的を達成するためにどんな工夫がよいか、本人も含めて(年齢や子どもの特徴によっては保護者と)考え、対話を通じて合意形成をするというものです。