国際バカロレア200校計画達成の一方、日本でケンブリッジ国際認定校が増加中 費用面を含め負担が大きいIB、断念した学校も
しかし、大学志願を考えると大学側は、A level で取得するべき科目を指定していることが多い。希望する大学が志願時に指定する科目に得意科目があるとは限らず、科目を絞ったがゆえに志願できる大学が絞られるケースもある(例:文科省は、国際バカロレアは、DP、ケンブリッジ国際は、ALevel、AS Level、IGCSEを習得していることが国内の大学志願資格があるとしている)。
日本で実践されているケンブリッジ国際プログラムの質
国際バカロレアは、教員、職員とも各段階で研修プログラムが豊富にあり、キャリアアップと同時に教員同士のコネクションを作り出している。同時に研修を必須としているため国際バカロレアの学びの体系をバージョンアップする仕組みがある。その一方で、各教員が探究的にファシリテートしていく質のバラツキは課題に挙げられている。
ケンブリッジ国際カリキュラムを教える教員の質について、ムサシ・インターナショナルスクール・東京の事務長・新井幸雄氏は「海外の教員資格を持ち、科目指導ができる教員はケンブリッジ国際で教えやすい」と語る。日本をはじめ各国の教員養成は科目ベースが中心である。そのためケンブリッジ国際の科目ベースは日本の学校でも取り組みやすい。

その一方で、国際系一条校が増えていく中でケンブリッジ国際、国際バカロレアともにコーディネーターが不足している。英語と日本語で教員と管理職と、カリキュラムや指導方法などを調整する重要な役割である。
国際プログラムの司令塔であるコーディネーター不足は、国際系一条校が増える中でボトルネックになる可能性がある。
国際プログラム認定校が日本の教育に与える変化
国際バカロレアの200校計画のプロセスの中で、日本の教育現場は、「探究」の仕組みやクリティカルシンキングを導入してきた。
国際バカロレア認定校が増える中で、地域の文化背景を取り入れた特色ある学びが増えている。
ケンブリッジ国際の特徴として、科目主体の学びに国際的な視野で横串を入れる「グローバルパースペクティブ」がある。世界的な視座で考える「グローバルパースペクティブ」は、ケンブリッジ国際認定校以外でも取り組みやすい仕組みだ。今後、一条校の「グローバルパースペクティブ」の学びが研修会などを通じで総合学習など探究の時間につながる可能性がある。
一条校が国際プログラムに取り組むことで学習指導要領との読み替えなど実務面のすり合わせが生じる。そのプロセスを通して、学びの内容、教授法の再認識など見直しによって、学校が内から多様な時代に合わせた学びにアップデートする機会を得る。
一条校がケンブリッジ国際、国際バカロレアなどの国際プログラムを導入することで生徒が国内外の進路をさらに選べるようになる。教職員も多様化し、教授言語の多様化から校風などが国際化していく。欧米の大学の授業料の高騰により、学んだ生徒が海外の進学につながるとは言えないが、国内の英語で学べる大学、コースも増えており、多様な人材を育成していく仕組みが出来上がっている。
一方で、国際プログラムを導入することで考えられるリスクもある。それは、プログラムの変更に関与することができない点だ。現在、イギリス国内では、ケンブリッジカリキュラムの見直しが進んでいる(注:ケンブリッジ国際と同じではない)。
現在、大学志願に用いるA Level は、3科目から4科目が中心であるが、イギリス国内では最低5科目(例:3つの主専攻と2つの副専攻)などが提案されている。イギリスの生徒は、16歳から19歳の間に3科目、4科目を学ぶのに対し、OECD平均は7科目である点もイギリス国内の後期中等教育の見直しにつながっている。A Level の見直しが議論されると同時にT Levelが新設され、インターンを含めたキャリア教育が導入され始めている。