社長は税理士!型破り鉄道模型会社の快進撃 SCに続々出店「ポポンデッタ」

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ダイヤモンドシティは同年にイオンモールと合併し、その後はイオンモールからのオファーを受け、各地のモールに続々と店舗をオープンすることになった。路面店ではなく、ショッピングモールなどの商業施設を中心に出店する方向性はこの時期に固まった。現在ではイオンモールのほか「ららぽーと」などさまざまな商業施設からのオファーを受け、その店舗数は年々増え続けている。

太田さんはオファーが相次ぐ理由について、商業施設が滞在型の施設を目指す流れの中で「ジオラマのような体験できる設備があり、売るだけではなく長く滞在してもらえる点が評価されているひとつのポイントではないか」と分析する。

夢は「10軒に1軒ジオラマのある世の中」

太田さんはモール中心の出店方針について「商業施設ならコアな方だけではなくご家族で楽しんでもらえる。これはわれわれがやりたかった、趣味をみんなで楽しむという方針に合致している」と、その理由を語る。

近年は模型の販売だけでなく、飲食業にも進出している。「イオンモール幕張新都心」(千葉市)と「ららぽーと富士見」(埼玉県富士見市)に出店している「鉄道カフェ スチームロコモティブ」だ。飲食という業態に乗り出した理由は、鉄道を家族で楽しんでもらえる趣味にする上で「食事なら間口がより広い」との考えからだ。

間口を広げるという点で、太田さんが最近注目しているのは「アパレル」だという。鉄道模型の楽しさを伝えるため、店に入ってもらうために、商業施設内では「雑貨屋やアパレルの顔をしていてもいいのでは」との考えからだ。4月にオープンした仙台の店舗には、初の試みとしてマネキンを2体置いた。「まだお洒落とはいえないコーディネートですが、いずれ自分たちで(商品の)企画もできるようにしていきたい」と太田社長はいう。

相次ぐ商業施設からの出店オファー、模型販売以外の業態への進出、さらに最近では自社ブランドの模型車両やジオラマ用品の販売――。税理士を目指す青年が個人事業として立ち上げた「ポポンデッタ」は、鉄道ジャンルだけでなく、総合模型店としても他に類を見ないレベルの企業に成長した。「鉄道模型の持つ力がここまで大きいとは思っていなかった」と、太田さんはこれまでを振り返る。

当面の目標は、引き続き店舗数の増加だ。2011年に立てた計画では、2020年に50店舗が目標だったというが、今年中にはすでに40店舗を達成する予定となっている。目標は今練り直しているため具体的な数字はまだ出ないが「物販だけでも100店舗はできると思っています」と太田さんは意欲を見せる。

(撮影:梅谷秀司)

実は、各店舗のジオラマに設置されたジオラマのほとんどは、太田さんとその家族による「手作り」だ。太田さんが設計し、税理士と社長の仕事を終えた後、実家で両親とともに制作するのだという。「丈夫さと納期の早さには自信ありますよ」と太田さんは笑う。

ポポンデッタの社長として全体を指揮すると同時に税理士として多数の顧問先を抱え、さらに帰宅後にはジオラマ造りに追われる太田さん。目指す夢は「10軒に1軒の家庭にジオラマがあって、家族で鉄道模型を楽しんでもらうこと」だ。「鉄道模型の楽しさをもっと伝えたい」という夢を乗せ、太田和伸というパワフルな機関車の驀進はこれからも続く。
 

小佐野 カゲトシ 鉄道ライター

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おさの かげとし

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年独立。国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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