ヒミツキチ森学園と葉山町「公教育とオルタナティブスクール」の連携に見た光 子どもたちの育ちを支える共同体のあり方

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不登校の問題については、「一番の問題は、家から出られず、どこともつながれない子どもたちがいること。葉山には、ほかにもオルタナティブスクールやフリースクールがあるが、どこであっても子どもたちの居場所があることが大事なので、連携するのは当たり前。オルタナティブスクールは一条校ではないけれど、私学と同じ小学校という捉え方をしており、学ぶ場所に縛りはない。そもそも、教室以外は学校ではないという考えは捨てなければいけないし、教育機会確保法でフリースクールも教育の場と認められているのだから、必要であればタブレット端末の貸し出しも行っている。いろいろな意味で子どもたちが育っていけばいいという考えだ」と稲垣教育長は言います。

「フリースクールは国家の根幹を崩しかねない」という滋賀県・東近江市長の発言とは正反対の姿勢です。

学習指導要領も変わり探究的な学びが重要視される中、それがなかなか簡単ではない現状を以前書きましたが(関連記事)、葉山町では探究的な授業研究に熱心な教員を集めて、どうしたら公教育でそんな学びを広げていけるかを話し合っているということで、オルタナティブスクールの実践も参考にしたいと考えているそうです。

反対に、現役校長がヒミツキチ森学園で授業をするなど地道な交流を通して、公立小学校の校長も主体的に学校をよくしていこうというマインドに変わり、全体的に歯車が噛み合っていい方向に動き始めているそうです。

「ヒミツキチ森学園の学習の様子を見させていただいて、課題や問いの持たせ方、自由進度で子どもたちが自分で学習計画を立て、振り返りながら次の学習につなげていくプロセスは、公教育の探究学習を進めていくうえでも取り入れたいと考えています」と言うのは中学校教諭を経て学校教育課長を務める濵名氏。

こんなところにも、オルタナティブスクールの取り組みを公教育に積極的に取り入れようという姿勢が感じられました。

葉山町では、葉山から日本の教育を変えるという意気込みで、新しい社会、新しい学びに対応するために、施設一体型小中一貫校の整備を目指しています。

そこで、葉山町教育委員会は「楽校をつくろう!」を合言葉に、新しい学びとその空間づくりにかかる取り組みのキックオフとして、11月12日に町民が参加して「未来の楽校を考えるワークショップ」を開催しました。

前回、「不登校29万9048人で過去最多、『日本の教育』はすでに崩壊していると言える訳」という記事を書きましたが、今回の取材を通して、希望もあることを知りました。公教育が抱える問題はたくさんありますが、確実に動き始めてもいるのです。

一人の女性の思いが、葉山という町でオルタナティブスクールとして形になり、周りを巻き込んで地域を動かしていく様子を見て感じたことは、理想を語るだけでなく、具体的に実践を積み重ねて体現していくことの大切さ。そして、もはや、一条校とかオルタナティブスクールとかフリースクールとかで区分けしている場合ではなく、子どもたちの育ちを支えている共同体としてそれぞれのリソースを提供し合う時ではないかということです。

「よい社会をつくるには、よい子ども時代が必要です」。これは、私がデンマークを訪れたときに、森のようちえんの園長先生が言った言葉です。なぜなら、よい子ども時代を過ごした子は大人になって、その地域に恩返しをしようと思うからです。

時代は大きく変わっています。それぞれの立場で何ができるか考えてみませんか。

(注記のない写真:中曽根氏提供)

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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